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政府による2022年度当初予算案の編成作業が、大詰めを迎えている。新型コロナウイルス禍で一般会計歳出総額は107兆円を超え、10年連続で過去最大となる見通しだ。「このままでは国家財政は破綻する」-。財務省事務次官が月刊誌に寄稿した「矢野論文」は、自民党など積極財政派の猛反発に遭い、財政膨張に歯止めがかからない。 「予想外に反響が大きかった。申し訳ない」。東京・霞が関にある財務省の会議室。10月中旬の幹部会合に、審議官や各局の局長ら約30人が一堂に集まった。出席者によると、矢野康治事務次官は、その場で謝罪の言葉を口にしたという。
財務官僚トップの異例の謝罪は、同月8日発売の月刊誌「文芸春秋」への寄稿に対するものだ。自民党総裁選や衆院選を巡る与野党の政策論争を「ばらまき合戦」と痛烈に批判。「矢野論文」と名付けられた寄稿の波紋は広がり、自民党からも「大変失礼な言い方だ」(高市早苗政調会長)と表立って批判が上がった。 財務省関係者によると、矢野氏は幹部会合で、当時の麻生太郎財務相に加え、首相だった菅義偉氏に事前に説明したことも明かしたという。会合に出席した同省幹部は「内容も手続きも問題はなかったが、与党への釈明に走り回った現場へのおわびの意味があるのだろう」と解釈する。
¥ ¥ 財務省きっての財政再建論者の矢野氏。菅前首相の官房長官時代に秘書官を務め、今年7月に一橋大出身者として初の財務次官に就いた。政治家や上司にも直言する「心あるモノ言う犬」と自らを評する。新型コロナ禍で拍車が掛かった財政膨張に警鐘を鳴らそうと、満を持して繰り出した一手はもろ刃の剣になった。 「財務省の完敗だ」。ある政府関係者は指摘する。22年度当初予算案の編成作業と並行し、国会審議が続く21年度の補正予算案。その歳出総額は補正予算として過去最大の35兆円超に達する。編成の折衝で「次官は反対でしょうが、これは必要な事業」と主張する省庁側が、財務省側を押し切る場面もあったという。 財務省からは「論文に関係なく、膨らんだはずだ」(幹部)との声も漏れる。旧大蔵省出身の自民の閣僚経験者も「論文は、消費税減税の議論を完全に封じた。財務省の防衛ラインは死守できた」と後輩をかばう。しかし、矢野論文とともに、財政再建派の声もかき消されたことは否めない。
¥ ¥ その一方で、積極財政派の勢いは増すばかりだ。来夏の参院選を前に与党の歳出圧力が高まっている。 今月1日、東京・永田町の自民党本部。大胆な財政出動が持論の高市政調会長直轄の新組織「財政政策検討本部」が初会合を開いた。最高顧問に安倍晋三元首相を迎え、積極財政派とされる議員が集まった。
出席者によると、今後の会議に矢野氏の出席を求める声が上がったという。「(財務省事務方トップの)次官を呼ぶ場じゃない」と慎重論が出て見送られたが、役員の一人は「呼ぶとつるし上げになる。さすがにやり過ぎだ」と語る。 国債発行残高が21年度末に1千兆円を突破する見通しの国家財政の健全化は、待ったなしの課題だ。ところが、岸田文雄首相は「経済あっての財政」を唱えている。コロナ後も見据え、今後の財政運営をどう描くのか。22年度当初予算案は24日に閣議決定される。 (一ノ宮史成)
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積極財政は国民の受けはよいが、結局は、将来世代への借金の先送りでしょう。 国から高いサービスを受けたいのであれば、増税が必要でしょう。
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