北東北沖の日本海溝沿いとその北に連なる千島海溝沿いで起きる二つの巨大地震について、内閣府は21日、被害想定を発表した。千葉県以北の太平洋側を中心に最大震度7の揺れと最大約30メートルの津波に見舞われる前提。最悪のケースで、日本海溝地震の場合は約19万9000人が死亡し、建物約22万棟が全壊・焼失し、経済的被害額は約31兆3000億円に上る。千島海溝地震は死者約10万人、全壊約8万4000棟、経済的被害額約16兆7000億円。内閣府は「対策を講じれば被害は減らせる。『正しく恐れる』ことが重要だ」としている。
被害想定は二之湯智防災担当相が21日の記者会見で発表した。事前の備えの必要性を国民に周知し、国や自治体の防災対策に活用してもらう目的で、中央防災会議の作業部会が検討していた。
日本海溝地震は三陸・日高沖、千島海溝地震は十勝・根室沖を震源とし、地震の規模を示すマグニチュード(M)はそれぞれ最大で9・1、9・3と想定した。発生の時期については「最大クラスの津波の発生が切迫していると考えられる」としている。2012、13年に内閣府が発表した「南海トラフ巨大地震」の被害想定では最大M9・1、11年に発生した東日本大震災はM9・0だった。
被害想定は二つの地震が別々に発生すると仮定。季節と時間帯については、冬の深夜▽冬の夕方▽夏の昼間――の3パターンを念頭に、さまざまな被害について検討した。20年4、9月に想定される津波の高さと浸水域を発表した際は市町村単位だったが、今回は被害の全体像をマクロ的に示したいとの理由で道県単位にとどめた。
直接的な被害が生じるとされるのは千葉以北の太平洋側7道県と秋田、山形両県。道県別では北海道の被害が顕著だ。原発については、地震発生と同時に運転が停止すると想定した。
被害想定は総じて夏より冬、夕方より深夜、避難する人の割合は少ないほど、程度が重くなる傾向がみられる。死者は太平洋側7道県で発生。日本海溝地震で約19万9000人、千島海溝地震で約10万人が死亡するのは、いずれも地震が冬の深夜に発生し、すぐに避難する住民の割合が20%のケースだ。冬の深夜を巡っては、津波による要救助者はそれぞれの地震で約6万9000人、約3万2000人となる。一方で負傷者が最も多いのは夏の昼間、すぐに避難する住民が20%のケース。冬は被害が重くなりやすく、負傷よりも死亡につながりやすいなどの理由からだ。
建物の被害は二つの地震でいずれの季節と時間帯でも、津波による全壊がほとんどを占める。冬の場合は雪の重みで揺れによる全壊棟数が増加し、さらに冬の夕方の場合は地震火災による焼失件数が増える。
経済的被害は、地震が冬の夕方に発生し、すぐに避難する住民が20%の場合を想定した。日本海溝地震では建物や農地、ライフラインなど被災した地域への直接的な被害は約25・3兆円、製造業などの生産・サービス機能低下による全国的な被害は6兆円。千島海溝地震では前者が約12・7兆円、後者は4兆円となる。
内閣府は防災対策で被害が軽減できることも強調している。死者数については、早期避難や津波避難ビル・タワーの整備、建物の耐震化で最悪の想定から8割減らせるとの試算も示した。【井口慎太郎】
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被害を最小限に抑えるためには何が必要なんでしょうか。海の近くに住まない?
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