このシステムは今年7月に米独立リーグで既に試験導入されている。その試合で球審は存在したが、ストライク、ボールをコールしたのは、バックネット裏のテレビモニターの前に座った元大リーガーのエリック・バーンズ氏。アスレチックス、ダイヤモンドバックスなどでプレーした元選手が、コンピューターによる判定をマイクで球場内にコールした。これは大リーグ全30球場に設置され、ボールの軌道などを追跡することができる「PITCHf/x」によって判定されたもの。この試合がプロ野球史上初めて機械がストライク、ボールを判定した試合となった。
判定に使用されるのは、バックスクリーンとバックネット裏の両サイドに取り付けられた3台のカメラ。これらが球速、軌道、ボールの位置を記録し、ストライクゾーンに入っているかどうかを識別する。実際に大リーグ公式サイトでは、既に「PITCHf/x」による1球速報を同サイト上で行っており、これを実際に試合の判定に導入している。この試合の当事者となった米独立リーグ・バリェロのゲイリー・テンプレトン監督は「われわれにはこういうことをする技術がある。とてもいい経験ができた。打者にとっても本当のストライクゾーンは何なのかいい経験になった」と好意的に受け止めた。
もし実現した場合、審判によって「外角が広い」、「高めはあまりストライクを取らない」などの偏りはなくなり、ストライクゾーンが均一化されるメリットはある。これにより、判定に異議を唱えてベンチから抗議に出てくる監督は激減するはずだ。ビデオ判定による「チャレンジ」制度の導入により、指揮官が判定を巡って審判に詰め寄る場面がめっきり減ったが、さらにビデオ判定の範囲が拡大されれば今以上に猛抗議の機会はさらに減るだろう。
だが、投げる投手、攻める打者ともに球審の癖を分析し、戦略を練って駆け引きするのもプロの醍醐味。その戦略性が失われるのは寂しいし、際どい球をストライクに見せる捕手のキャッチング技術も機械には通用しないのだろう。日本で言えば見逃し三振の際の卍(まんじ)ポーズで知られる敷田直人審判のような名物審判の個性あふれる決めポーズが見られないのも球場の風物詩が消えてしまうようで惜しい気がする。賛否両論あるだろう「ロボット球審」の今後に注目していきたい。(東尾 洋樹)
(スポニチアネックス)
誤審がないロボット審判もありだろう。
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