「ファストドクター」「保健所」につながりにくい状態が続く…
新型コロナウイルス感染による自宅療養者はついに全国で11万人を超えた。もしも自宅療養を余儀なくされたら一体何を頼ればいいのか。聞こえてくるのは「保健所の電話がつながらない」「酸素飽和度が90%を切っても入院させてもらえない」といった声ばかりで、具体的な援助や支援のインフォメーションは行き渡っていない。 そんな中『医療ガバナンス学会』のメールマガジンに、気になるタイトルを見つけた。 「怠さや息切れ、コロナかな?と思ったら、気軽に訪問看護ステーションに連絡を」 気軽に? そんなことができるのか? 一体どんなことをしてもらえるのだろうか。この記事を書かれた訪問看護ステーション「ビジナ」代表の坂本 諒さんに、活動内容や最近の状況を聞いた。 ◆「医療提供体制は深刻な機能不全」と東京都。感染したら… 「訪問看護ステーションでは、日頃は身体や精神に障がいのある方など、慢性的な疾患をもつ方をケアしています。ビジナは都内に4ヵ所、札幌市に1ヵ所、事業所がありますが、発熱者が増えてきたため、今年6月、都内のうちの1ヵ所をコロナ専門にしました」(坂本 諒さん 以下同) 新型コロナ感染で自宅療養する場合、本来ならまず医師が陽性を確認し、そこから保健所に連絡が行き、保健所が訪問診療医に連絡。その医師が訪問看護を手配する、というのが正規のシステムだ。けれど、その間にも容態は急変する危険がある。 待ったなしの状況に、坂本さんは自社のHPに新型コロナ患者・疑い患者用のインフォメーションを追加して電話番号を明記。発熱時、PCR検査の結果待ち、コロナ感染確定後、いつでも対応すると呼びかけた。ちなみに該当エリア外でも、無料で相談に応えているという。 「直接連絡をくだされば、いつもチームを組んでいる先生と一緒にサポートすることが可能です。陽性者が増えすぎて、保健所も機能していないところがあります。心配ごとがあったり正規のルートが使えない場合は、ぜひ頼っていただけたら」 とはいえ、マンパワーには限界がある。一日の感染者数を減らしていかなければならないということは、言うまでもないのだ。 ◆「誰の指示で訪問診療を使ったのか」と中等症患者を叱った江東区保健所 先日坂本さんが対応したのは、自宅療養の現状を物語るかのようなケースだった。 8月13日(金)に陽性が判明した江東区在住の30代男性。病院から「保健所を通し、連絡が行きますのでお待ちください」と言われたものの、連絡は来ない。40度の熱に苦しみながら金曜、土曜と電話をかけ続けたが病院にも保健所にもつながらず、ネット検索でビジナを見つけ、土曜の夜に電話。 「東京都の場合、夜間休日は訪問診療ではなく、ファストドクターに連絡をすることになっていますが、その方はファストドクターを知りませんでした。そこで私がアクセスしたところ、すべて“満診”になっていて、電話も一時停止が続き、結局土日は、公式のところには一切つながりませんでした」 夜間休日はファストドクターに? その名称は聞いた覚えがあるが、そんなシステムは今初めて知った。 「男性は、食べられないけれど水分は摂れていました。若干呼吸苦があるようでしたので、ひとまず酸素飽和度を測るパルスオキシメーターを届けに行き、すぐにフットワークの軽いドクターに連絡。土曜日のうちに診察に行ってくださいました」 その時点で、男性は中等症にさしかかった状態だった。しかしパルスオキシメーターの数値には問題がなかったので、ドクターも「必要な時に補液すれば自然軽快するだろう」と判断した。けれど月曜には酸素飽和度が89%まで低下する。 「在宅酸素を入れ、飲料も摂りづらくなってきたので点滴を始めつつ、同居していたお母様が救急要請をされました。けれど入院はできないと言われ、やっと入院先が見つかったのは水曜日でした。その後、お母様もコロナ陽性が発覚しましたが、幸い、症状は軽かったのです」 そして、なんとか入院先が決まったあたりで男性の家族から届いたお礼メールの内容に、坂本さんは驚くことになる。 病院からの陽性発生届けは、男性の住む江東区の保健所に伝わっていなかった。さらに保健所から「勝手なことをして、誰の指示で訪問診療を使ったのか」というようなことを強い口調で言われて驚いた、と書かれていたのだ。 「患者が保健所に怒られた形です。これはさすがにひどいなと思いました。利用者を叱るようなことはしないでほしかったですね」 ◆「コロナ対応に看護師は不要」と言い放った東京都 もしも男性が来るはずのない連絡を待ち続けていたら、一体どうなっていたのだろうか。病院か保健所か、どちらかのミスで命を落としかねなかった患者が、なぜ叱責されなければならないのか、理解に苦しむ。 「私たちは早い段階から“訪問看護ステーションではこういうことができますよ”と、ビジナの事務所のある品川区と隣接区を中心に訴えてきました。けれど“東京都は医師会とファストドクターでやるから、看護師なんていらないです”という感じで断られてきたんです。関西で、あれだけパンクしていたにもかかわらず、“看護師はコロナ対応には不要。医者だけで回しますんで”と言われ、“本当に困った時にどうするのよ”という思いでした。 それが今になって品川区は“医者だけでは手に負えなくなったのでご相談です”と協力を求めてきました。あまりに遅いですが、それでも提案があっただけまだいいほうだと思います」 今から準備し、協力体制を整えていくということか。パンデミックが始まって1年半以上もの間、東京都も医師会も、一体何をやっていたのだろうか。 ◆万が一に備えて、いざという時の連絡先は多めに確保を! 今後も増えていくと思われる自宅療養だが、坂本さんは注意してほしいこととして、「ワクチンの副反応とコロナ感染の混同」を挙げている。 「高齢者のご夫婦で、おふたりとも新型コロナに感染しているのに、ワクチン接種の副反応だと思い込んでいるケースがありました。看護師が駆けつけたとき、ご主人は39度近い発熱。意識レベルは低下し、酸素は87%でした。ワクチンの副++反応でそこまで悪くなることはありませんので、具合が悪いなと思ったら、すぐに連絡してほしいです」 ワクチンを2回接種しても、免疫がつくまでに2週間ほどかかると言われている。また、ブレイクスルー感染も増えているので、予防策は徹底しておきたい。 ビジナは24時間365日、電話をすればいつでも対応してくれる。全国の訪問看護ステーションの中でも特異な存在ではあるが、営業時間内ならコロナ対応可能なステーションもある。訪問診療やオンライン診療を実施している医師、在宅クリニックなど、日頃から連絡先は複数チェックし、正規のシステムが機能しない場合にはすぐに連絡がとれるように、準備しておくことが大切だ。 坂本 諒(さかもと・りょう) 看護師・保健師。医療ガバナンス研究所研究員。看護師として総合病院3年、訪問看護2年7ヵ月の経験を経て起業。2019年より訪問看護ステーション「ビジナ」を運営。現在、都内4カ所、札幌市内1カ所で事業を展開している。 取材・文:井出千昌
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コロナ対応可能の訪問介護ステーションは朗報です。
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