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【東京五輪 祭典の舞台裏(6)】元アスリートの見解は――。東京五輪では過去最多となる27個の金メダルを含む58個のメダルを獲得。日本列島が歓喜に沸く一方で、多くの問題が浮かび上がった大会となった。かねて五輪開催に異議を唱えていたラグビー元日本代表の平尾剛氏(46=神戸親和女子大教授)は自国開催の祭典をどう見たのか。大会を通じてスポーツの魅力を再確認しながらも、権力者の言動には怒り心頭。もう一度五輪の問題点を〝蒸し返す〟必要性を訴えた。 ――東京五輪を終えて 平尾氏(以下、平尾) 正直、心底からは楽しめなかった。やっぱり裏側を知ってしまったし、五輪を開催する上で社会が犠牲になっているのが頭にあったのと、コロナの感染者がすでに開幕前から増え始めていた中で、この先いったいどこまで増えるんだろうっていう不安もあって、楽しもうにも楽しめない。ずっと息苦しさを感じていました。 ――スポーツの魅力を感じた部分もあった 平尾 いい場面も正直あった。女子サッカー日本代表(なでしこジャパン)の選手が英国の選手の呼びかけに応じてピッチに片ヒザをつけたり、陸上の女子砲丸投げのレーベン・ソーンダース選手(米国)が頭の上で両手をクロスさせてバツをつくって、抑圧された人々との連帯を示していたのが印象的だった。あとは新種目のスケートボード女子パーク決勝で岡本碧優選手がミスをした際に、ライバルの選手たちが岡本選手を抱擁したりとか、振り返ると心に残る場面はあって、やっぱりスポーツには魅力がある。つい感動する。それを再確認したと同時に改めて気がついたのは、スポーツと五輪は違うなということです。 ――どういうことか 平尾 僕の心が動いたのはスポーツであって、五輪ではないんです。世界選手権やワールドカップでもスポーツは見られる。もっと言えば、学生スポーツの大会や運動会だってそうでしょう。勝利を目指すプロセスで生まれるドラマは、競技レベルを超えて響くものだと思うんです。トップアスリートの世界だけがスポーツではないと、逆説的に実感しました。 ――平尾氏が考えるスポーツの在り方は 平尾 もう金まみれからは脱却しようと。商業主義そのものを否定するわけではなく、その過剰さを見直そうということです。さまざまな経費がかかるのは分かるけど、無駄が多すぎる。スポンサーのコンボイ(車列)が連なる聖火リレーなんて、明らかに行きすぎでしょう。もっと質素でいいじゃないですか。つまり、スポーツを五輪から切り離すということです。 ――そのためにやるべきことは 平尾 スポーツ界が言葉を持つことだと思います。当事者であるアスリート、元アスリートが言葉で意思を示さなければ、何も変わらないのではないでしょうか。これからスポーツをどうしたいのか、どうするべきなのか。五輪はこのままで本当にいいのか。当事者には声を上げる責任があると思う。 ――権力者の振る舞いにも疑問が残った 平尾 河村たかし名古屋市長が(ソフトボール日本代表・後藤希友投手の)金メダルをかんだ時点で、その場にいた人は何も言わなかったんでしょうか? そもそも表敬訪問の目的が僕にはよく分かりません。菅義偉首相も金メダルを取った選手に祝福の電話をして、五輪を利用したイメージづくりを行っていましたが、書かれた原稿を読むだけでは逆効果だった気がします。(国際オリンピック委員会の)トーマス・バッハ会長の一連の言動は、日本や日本のスポーツ界をナメているとしか思えませんでした。これに対しては、きちんと怒らなければいけなかったと思うし、その怒りをこの先も持続させなければなりません。 ――最後にひと言 平尾 アフター五輪のキーワードは「蒸し返す」。五輪が終わって約6割の人がやってよかったという結果も出ている。これは「スポーツ」を見て多くの人が感動したっていうことです。実際に見たのは五輪じゃない。大会の仕組みそのものは見えませんから。スポーツと五輪を切り離し、きちんと五輪に関する問題を蒸し返して検証をすることが必要です。 ☆ひらお・つよし 1975年5月3日生まれ。大阪府出身。中学時代にラグビーを始め、同志社香里高、同志社大を経て、神戸製鋼に加入。99年ラグビーW杯では、日本代表に選出された。しかし2005年ごろから脳振とうの後遺症に悩まされ、2年後に現役を退いた。自身のケガを機に、06年から神戸親和女子大学大学院の文学研究科修士課程教育学専攻で研究をスタート。現在は同大の発達教育学部ジュニアスポーツ教育学科で教授を務めている。182センチ。
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会計報告も含めて、五輪の蒸し返しと検証が必要でしょう。スポーツに感動するけど、五輪に感動しないは名言です。
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