日本への歴史戦を展開する中国は、天皇陛下まで巻き込むつもりか。到底、容認できない。
国営新華社通信が、「中国への侵略戦争と太平洋戦争」についての記事を配信し、昭和天皇が戦争の発動を指揮した「張本人」と決めつけたうえで、皇位を継いだ今の天皇陛下が被害国に謝罪するよう求めた。
天皇は国政に関する権能を持たず、批判に反論することもできない。記事は極めて不当な内容であり、日本の国民感情を害するものでしかない。
安倍晋三政権が中国に抗議したのは当然である。
天皇陛下を政治的に利用することは決して許さない態度を鮮明にし、事実に基づく反論によって中国の歴史戦に対抗していくことが重要だ。
記事は、中国共産党宣伝部が管轄する新聞、光明日報などが掲載した。要人が直接、発言したものではないが、党の狙いが示されたともいえよう。
そもそも、日中間の戦後処理は1972年の国交正常化で決着済みである。その際、昭和天皇の謝罪は必要とされなかった。
占領下に連合国が行った極東国際軍事裁判(東京裁判)でも、昭和天皇は訴追されていない。昭和天皇は立憲君主として、内閣や統帥部の補佐を受け、形式的な政治行為を行ったが、戦争責任を問われる立場ではなかったのだ。
今の天皇陛下は92年の中国ご訪問の際に「わが国が中国国民に対し多大の苦難を与えた不幸な一時期がありました。これは私の深く悲しみとするところであります」とお言葉を述べられた。
89年の天安門事件で中国が国際社会から経済制裁を受け、孤立していた時期である。
当時、中国外相だった銭其●元副首相は回想録で、「西側による対中制裁の打破に積極的効果があり、その意義は明らかに中日二国間関係の範囲を超えていた」と陛下のご訪中を政治利用し、成功を収めたことを誇った。
友好親善のためのご訪問を、自国の利益のためだけに、臆面もなく政治利用する。それが中国共産党の本質だとすれば、習近平政権でも変わっていないと受け止めざるを得ない。
日中関係の改善を望むなら、暴言といえる陛下への要求を直ちに撤回し、謝罪すべきである。
●=王へんに深のつくり
(産経新聞)
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