神戸市灘区の閑静な住宅街の一角は、27日朝から異様な緊張感が漂っていた。高さ約5メートルの厚い鉄のシャッターが下ろされた山口組総本部前に兵庫県警の捜査員や報道陣が詰めかけた。
大阪、名古屋、岡山…他府県ナンバーの高級車が次々と到着するたびに総本部のシャッターが上がった。
山口組の分裂情報が飛び交う中で、捜査員の一人は「目立った動きがない。どうなっているのか」と眉間にしわを寄せ、動向を注視していた。
捜査関係者によると、山口組の直系組織74団体のうち、10団体以上が離脱するとみられている。山健組など多くが関西拠点の組織だ。
兵庫県警の捜査幹部は「今のヤクザの世界には仁義も何もない。頭の中にあるのはカネだ」と語る。内部では上納金などカネの使途が不明朗といった批判もあったとされる。
「名古屋に重きを置いた体制を敷く6代目に反発する者が、我慢の限界を超えたということだろう」。大阪府警の捜査幹部は分裂の背景に「名古屋支配」への不満が鬱積(うっせき)していたとの見方を示した。
名古屋とは、山口組2次団体・弘道会のことだ。神戸を本拠とする山口組では代々、関西を地盤とする最高幹部が運営の実権を握ってきた。だが、平成17年7月に篠田建市組長が6代目に就任し、出身母体の弘道会から高山清司受刑者を若頭に登用。山口組の歴史上初めて同一組織で、さらに「非関西」の出身者がナンバー1、2に就いた。
山口組は戦前、神戸の一暴力団組織にすぎなかったが、終戦直後に田岡一雄組長が3代目に就任すると、全国進出を本格化させ、勢力を拡大した経緯がある。
「山口組は神戸発祥だが、名古屋に軸を移すという話も出ていたと聞く」。大阪府警の捜査幹部は現状をこう分析し、「脱退派への切り崩し攻勢は強まるだろう」と今後の展開を懸念する。
兵庫、大阪両府県警は、抗争などに発展する可能性もあるとみて警戒を強めている。
(産経新聞)
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