ページビューの合計

2016年10月8日土曜日

死刑廃止は「潮流」か 廃止国増加も国内世論は8割「存続」

■被害者側を軽視日弁連に溝

 日本弁護士連合会(日弁連)が7日、福井市で開かれた「人権擁護大会」で、平成32年までの「死刑制度廃止」を表明する宣言案を賛成多数で採択した。日弁連は死刑廃止国が増えていることを「世界の潮流」と捉えるが、国内で死刑制度の必要性を訴える声は根強い。強制加入団体である日弁連が、賛否が分かれる問題への態度を多数決で決めたことは、組織内に溝を残す結果となった。

                   ◇

 ◆「一歩踏み出す」

 「先進国で死刑制度を維持し、実行している国はほとんどない。犯罪被害者の思いをよく理解した上で、悩みながらも、死刑廃止について理想を求めて一歩踏み出すべきではないか、と決意したのが今回の宣言」。5日に福井市で会見した日弁連の中本和洋会長は、死刑廃止に向けた国際的な「潮流」を強調した。

 国際人権団体アムネスティ・インターナショナルによると、2015年末までに死刑を全面的に廃止した国・地域は102で、1996年の60から大幅に増加した。宣言はこうした流れに加え、2014年の国連総会で「死刑の廃止を視野に入れた死刑執行の停止」を求める決議が採択されたことに言及。死刑は誤判の危険性があり、「重大犯罪を抑止する効果は乏しい」と死刑廃止に踏み込んだ。

 しかし、そんな「潮流」も、「人口比で見れば中国など存置国の人口は多く、(死刑廃止の)説得力のある理由にはならない」と疑問視する声も上がる。

 また、国内の世論調査では、死刑制度の存続を求める意見が多数だ。内閣府の調査では、平成元年以降、死刑存置の意見が6~8割で推移。26年度の調査でも「死刑もやむを得ない」が80・3%で、「死刑は廃止すべきである」の9・7%を大きく上回った。

 東京弁護士会が6年に実施した会員向けアンケートでは、条件付きも含めると「廃止」が61・1%だったものの、「存置」も32・3%だった。ただ、弁護士の意識調査結果はほとんど公表されておらず、内部の意見が明確にならないまま組織としての態度を決めることへの不信感もある。

 ◆支援への影響懸念

 犯罪被害者支援弁護士フォーラムが出した反対声明は、宣言を「極刑を望む被害者遺族の心情を踏みにじるもの」と批判。米田龍玄弁護士は「大多数が賛成しているかどうか分からない意見を全弁護士の意見かのように宣言するのは、不適切だ」と指摘する。

 日弁連が死刑廃止を宣言することで、被害者支援に携わる弁護士からは「われわれに対する被害者遺族の信頼が失われ、十分な支援活動ができなくなる」(高橋正人弁護士)との懸念も漏れ、「思想・良心の自由の侵害」との批判を振り切った形での採択となった。

                   ◇

 ■3万7000人中、786人で多数決 人権大会、委任状認めず

 死刑廃止宣言が採択された日弁連の人権擁護大会は、委任状による議決権の代理行使を認めていない。3万7千人超の会員のうち、今回、採決に参加したのは現地に足を運んだ786人にとどまった。

 日弁連によると、年1回開催される総会は、委任状を提出すれば、議題について意思表明をすることができると会則で定められている。これに対して、人権擁護大会の規則には委任状の規定がなく、「議決は出席会員の過半数で決める」としている。

 一部会員からは「参加できる人だけの多数決で重要な議題を決めようとしている」との声もあるが、日弁連幹部は「人権についての問題は人権擁護大会で扱われるのが通常」と説明。宣言案のテーマや内容は各単位(弁護士)会や理事会の議論を経た上で決まったとして、「出し抜けにこの宣言案を出して、多数決したということではない」と語った。

                   ◇

 ■国連会議ホスト国の姿勢示す

 日弁連はこれまでも死刑廃止に向けた議論を呼びかけてきたが、廃止を明確に打ち出したのは初めてだ。平成32年には刑事司法に関する国連会議のホスト国となることなどから、踏み込んだ姿勢を示した形だ。

 日弁連は23年の人権擁護大会で、死刑廃止についての社会的議論を呼びかける宣言を採択。その後も、各単位(弁護士)会が死刑制度について検討する委員会などを設置、各地でシンポジウムを開くなどして議論の活性化を目指してきた。

 こうした中で、26年度の内閣府の世論調査では、仮釈放のない終身刑の導入を仮定した質問を新設。終身刑が導入された場合は「死刑を廃止する方がよい」とする回答が37・7%に上った。

 日弁連幹部は「世論が必ず死刑を望むとは限らないことが分かった」として、これまでの活動が実を結んだとみている。

 一方、32年には「国連犯罪防止刑事司法会議」が日本で開催されることも決定。「日本の法制度が注目される機会」として、死刑廃止の目標期限に定めた。
(産経新聞)

 被害者側の立場では、死刑もや止むなしだろう。

0 件のコメント:

コメントを投稿