運命の日を前に、報道陣約40人、テレビカメラ7台が詰めかけても、田中は気持ちの高ぶりを見せない。穏やかな笑みを浮かべて言った。
「楽しみになってきたかな。こればっかりは、どうなるか分からないので、それも含めて楽しみに待っていればいいのかなと」。そして現在の心境を「人事を尽くして天命を待つ」と表現した。
3年春に156キロを計測し、12球団競合の可能性もささやかれて迎えた今年。4月に右肩の違和感、7月に右太腿裏の肉離れを発症した。「4年生になって正直、まともな投球はまだない」。回復した今はエース兼主将として、明治神宮大会出場を目指し練習に励む。一時は故障を不安視していた球団も、相次いで田中を再評価している。
周囲の盛り上がりにもぶれないのは、冷静な自己分析があるから。「課題の多い投手。大学生の中では高い評価をもらっている立場だと思うが、自分自身の評価は皆さんと全く違う。自分が思う自分の評価を大切にしたい」と言い切る。体調管理に集中し、新聞やテレビの報道も「あまり見ていない」という。
チームメートで同じくドラフト候補の右腕・池田から前日に「どこ行きたい?」と水を向けられても「いや別に。マジ、プロ野球選手になれるかどうかすら分からないから」とクールに返答。池田も「そういうタイプ。正義らしい」と苦笑いしつつ感心した。この日の練習前も田中は普段通り。疲労回復などに効果があるとされる水素吸引をしながら小説「下町ロケット」を読みふけり、リラックスに努めた。
クライマックスシリーズ・ファイナルステージでは同い年の日本ハム・大谷が日本最速を更新する165キロを記録。「同じ立場では考えられない。一ファンとして凄く感動した」というが、自身も目標の一つに160キロを掲げ、同じ舞台で勝負に挑もうとしている。「どこに行っても自分の力をつけるという一点しかない」。改めて12球団OKの姿勢を示し、泰然と当日を迎える。(大林 幹雄)
(スポニチアネックス)
日本ハムは田中回避で、高校生投手の1位指名もあるだろう。
0 件のコメント:
コメントを投稿