なお、MotoGP 日本グランプリの3日間通しの前売り観戦券は大人9300円、車椅子席9300円で中学生以下の子供は無料。通常の指定席観戦券はローソンシート(V1)とセブン-イレブンシート(V6)をのぞいてほぼ完売状態。また、各メーカー応援用のサポーターズシートにもまだ空きがあるので、詳しくは「ツインリンクもてぎチケット情報」をチェックしてほしい。
■タイヤがブリヂストンからミシュランへ
2016年シーズンは、とくにMotoGPクラスで大きな変更が数多く行なわれた年になった。まず、マシンの走りを文字どおり足下から支える重要パーツであるタイヤのメーカーが、ブリヂストンからミシュランに切り替わった。そもそも2008年までは両社がタイヤを供給するコンペティション形式だったが、2009年からブリヂストン1社が供給するワンメイク方式となりミシュランが姿を消していたわけで、これにより8年ぶりにミシュランが再参戦を果たしたことになる。
タイヤのパフォーマンス自体はレースを重ねるたびに向上しているように見える。シーズン序盤こそフロントから不可解な転倒をするライダーが多く見られたものの、改善が進んだためか中盤以降は転倒が目立つようなレースは少なくなった。リアタイヤのトラブルやウェットタイヤの開発の遅れなど、いくつか細かいアクシデントがあったとはいえ、それらを克服してアップデートを続けているようだ。
タイムで見ると、各コースのポールポジションタイムはわずかに前年を下まわる程度。これはこの後に述べるECU周りのレギュレーション変更も影響している可能性が高いので一概に比較できないが、少なくともドライコンディションにおけるタイヤパフォーマンスが前年を大きく下まわることはないものと思える。
■ECUは全チームともハードウェア・ソフトウェア共通化
レースバイクにとってエンジンと並ぶもう1つの心臓部とも言えるECU(Electronic Control Unit)は、2016年から全チームでハードウェア・ソフトウェアともにMotoGPの運営側から提供される共通のもの(マニエッティ・マレリ製と言われている)を使用することになった。ECUは、エンジンと車体の挙動の多くを電子制御するためのパーツだ。
ハードウェアは2014年から全チームで共通化されており、ソフトウェアについても一部のチームは共通化されていたものを使っていた。それらのチームは「オープンクラス」カテゴリーとして扱われ、シーズン中に使用可能なエンジン数、1レースの燃料上限などが緩和されていた。一方、ソフトウェアのみ独自のものを使用するチームは「ファクトリーオプション」として扱われ、オープンクラスとの差別化が図られていた。
2016年からはECUがハード・ソフトともに全チーム共通化されることで、このオープンクラスとファクトリーオプションという区別は撤廃された。これにより、使用可能なエンジン数は7基/年まで、燃料上限は22L/レースに統一されている。ただし、2015年から前年までに好成績を残せていない一部のチーム、具体的には復帰2年目のスズキ(Team SUZUKI ECSTAR)と参戦初年度のアプリリア(Aprilia Racing Team Gresini)には「コンセッション」(ポイント)という数値が設定され、表彰台を獲得してコンセッションが累積6ポイントに達するまでは、エンジン数や燃料上限などの面で引き続き優遇処置を受けられる。
ECUが全て共通化されたということで、各チームが手を出せるのはそのソフトウェアで可能な範囲の細部の調整のみということになる。すでにシーズンも終盤になっており、どのチーム・ライダーも合わせ込みが仕上がっていると思うが、ECU変更後初の日本グランプリということで、ツインリンクもてぎというサーキットにうまくセッティングをマッチさせられるかどうかもトップ争いするチームにとって1つのポイントになるはずだ。
■シリーズウィナーにマルケス選手が王手。Moto2の中上選手にも注目
前戦となる第14戦終了時点のシリーズポイントランキングは、トップが2013年、2014年のチャンピオンであるマルク・マルケス選手(Repsol Honda Team)で248ポイント、52ポイント差でこれを追うのが7回のチャンピオン獲得経験があるバレンティーノ・ロッシ選手(Movistar Yamaha MotoGP)。ロッシ選手のチームメイトで前年の覇者であるホルヘ・ロレンソ選手が2位からわずか14ポイント差につけ、以降は2015年の日本グランプリ優勝者のダニ・ペドロサ選手(Repsol Honda Team)、第12戦で再参戦2年目のスズキを早くも優勝に導いたマーヴェリック・ビニャーレス選手(Team SUZUKI ECSTAR)、カル・クラッチロー選手(LCR Honda)と続く。
日本グランプリで仮にマルケス選手が勝利して、ロッシ選手が2ポイント(14位)以下に終わった場合、残りの3戦で全てロッシ選手が勝利してマルケス選手がノーポイントだったとしても追いつけないため、2016年のチャンピオンはマルケス選手に決定する。また、ロッシ選手のすぐ後ろに3位のロレンソ選手もつけているため、場合によってはここで2位と3位が逆転する可能性もある。
現在5位のビニャーレス選手は、通算ポイント数が149ポイントとシーズンをつうじて着実に上位に食い込んできた。また、スズキにとって7年振りとなるMotoGPの勝利をチームにもたらした功績はあまりにも大きい。シリーズポイント上も4位のペドロサ選手と6ポイント差しかなく、いつでも追いつき、追い越せる位置にいる。日本グランプリでの走りがシーズン終了時のポイントランキングのよしあしを決定づけることもあるだろう。
なお、MotoGP 日本グランプリには1戦限りのスポット参戦となる「ワイルドカード」(特別参加枠)として、全日本ロードレースのJSB1000や鈴鹿8時間耐久ロードレースで圧倒的な強さを見せている中須賀克行選手が参戦する。また、Moto2には全日本ロードレースのJ-GP2で現在のシリーズランキング1位となっている浦本修充選手、同2位の関口太郎選手の2人がエントリー。さらにMoto3には、全日本ロードレース J-GP3で現在総合4位の佐藤励選手、そして日本人女性ライダーとしては21年ぶりの世界選手権参戦となる岡崎静夏選手がそれぞれ出場する。
Moto2のフル参戦選手では、現在シリーズランキング6位につけている中上貴晶選手(IDEMITSU Honda Team Asia)に注目だ。第8戦で初優勝を飾ったのをはじめ、2位と3位まで合わせると計10回も表彰台を獲得しており、確実に表彰台の常連になりつつあると言えるだろう。未だ実力を発揮できていない母国日本グランプリで会心の走りを見せ、来年、再来年には念願のMotoGPのシートを手に入れることを期待したい。
Car Watch,日沼諭史,Photo:Burner Images 佐藤安孝
ストップ&ゴーの過酷なコースを制するのは、どのライダー・メーカーだろうか。
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