ポーランドへの亡命を希望しているベラルーシ陸上選手、クリスツィーナ・ツィマノウスカヤが8月4日午前、ついに日本を旅立った。およそ12時間後には経由地であるオーストリアのウイーンに到着し、現地でも当局の保護下に置かれているという。 トラブルが表面化したのは、8月1日の夕刻だった。イスタンブール行きの飛行機に搭乗予定だったツィマノウスカヤが、これを土壇場で拒否して、日本の空港警察に保護を求めたのである。突然のオリンピアンの登場に、マスコミや野次馬が殺到するなど空港は一時騒然。ツィマノウスカヤは、ベラルーシ政府による弾圧からアスリートを守る市民団体BBSFを通してビデオメッセージを発信し、騒動の全容を打ち明けた。 まず7月31日、ツィマノウスカヤはベラルーシ陸上チームのコーチ陣から理不尽な仕打ちを受けた。翌月曜日に出場予定だった東京五輪・陸上女子200メートルのエントリーをキャンセルし、金曜日開催の4×400メートルリレーに鞍替えするように命じられたのだ。複数のリレーメンバーが出場条件とされるドーピング検査を受けていなかったため、その穴埋めに指名されたという。これにツィマノウスカヤは憤慨。自身のインスタグラム上でコーチ陣の不手際と強引な種目変更を公然と批判した。 すると、ベラルーシ国内でこれが大問題に発展する。種目変更の指示はベラルーシ五輪委員会から出されており、その会長を務めるのは、「欧州最後の独裁者」と称されるアレクサンドル・ルカシェンコ大統領の長男。やがて国営放送『ONT』が「彼女にはチームスピリットが欠けている」と吊り上げ、バッシングのキャンペーンを張っていくのだ。 インスタグラムのアカウントは削除され、コーチ陣はツィマノウスカヤの部屋に駆け込んで「明らかな政権批判だ!」「荷物をまとめて帰国しろ!」と強要。選手本人から当時の状況を聞いたジャーナリストは「誘拐に近い状況で空港に無理やり連れていかれた」のだと伝えている。
ツィマノウスカヤは付き添いの関係者がいなくなったのを確認して、空港にいた警察官に保護を求めた。「このまま帰ったら刑務所に入れられてしまう。亡命を手助けしてほしい」と身の危険を訴えたのだ。オーストリアやチェコが候補に挙がるなか、ルカシェンコ政権に懐疑的なスタンスを取るポーランドが支援を約束。BBSFの拠点もあるワルシャワに迎えるべく、急きょビザを発給したのである。
そして水曜日、ツィマノウスカヤは欧州に向けて旅立った。その直前、英公共放送『BBC』のリモート取材に応じ、「私は単にコーチ陣の理不尽を告発しただけです。政府批判などなにもしていません」と訴えつつ、「ただこうなったからには、帰国しても刑務所に入れられるだけです。選択肢はありませんでした」と説明。 ベラルーシ選手団が「ツィマノウスカヤは感情的・精神的に問題が発生して、ドクターの指示により競技出場をキャンセルした」と発表した件に対しては、「私は精神的に壊れてはいないし、ドクターとは会ってもいません」と反論した。 夫であるアルセニー・ズダネビッチ氏はウクライナへの脱出に成功しており、そこからポーランドに向かう予定だという。だがそのウクライナで8月2日、看過できない事件が起きた。亡命していたベラルーシ反政権派のリーダーがキエフ郊外の森林で遺体となって発見されたのだ。警察は自殺と他殺の両面で捜査をしているが、後者の可能性が高いという。同リーダーは数日前から誰かに尾行されていたようで、自身の身の危険を周囲に明かしていた。国外にしても、かならずしも安全ではなくなってきている。 ツィマノウスカヤは「もちろん母国ベラルーシに戻りたい。いつか安全だと確信できれば……5年か10年はかかるかもしれません」と沈痛な面持ちで話した。 ポーランド外務省は「我々はツィマノウスカヤさんを全面支援し、アスリートとしての今後についても協力できるはずだ」とのメッセージを寄せた。最後に選手本人は「私はまだ24歳。あと2回はオリンピックに出るつもりでいました。夢を諦めきれません」と決意を口にした。構成●THE DIGEST編集部
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選手や国民の意に反して、独裁で物事が決まるのがかわいそうです。反論すると、政権批判、チームスピリッツが欠けている、愛国者でないは、誰かの理屈と一緒です。

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