電子や陽子などを光速近くまでに加速し、衝突させる実験は物理学の基本原理の解明に大きく役立ってきた。現在の最大の加速器は、スイスとフランスにまたがる1周約27キロの円形加速器LHCだ。欧州合同原子核研究機関(CERN)が運営し、2012年に陽子衝突実験で「最後の未発見粒子」といわれたヒッグス粒子を発見した。
しかし、ほかにも未発見の粒子があるかもしれない。時間と空間の構造が現在の常識とは違う可能性もある。謎を解くには、ヒッグス粒子をたくさんつくり、その性質を詳しく調べるのがいい。そのために構想された巨大線形加速器がILCだ。地下100メートルに長さ約31キロのトンネルを掘って建設する。
国際協力による概念設計ができたのが07年。国内の建設候補地は北上山地と九州北部の脊振(せふり)山地に絞られ、地質や土木の専門家も入った委員会が13年に北上山地を選んだ。地盤が安定し、将来構想で描く「50キロの直線ルート」を確保できることが決め手となった。
世界最先端の研究所ができれば「東日本大震災からの復興にも寄与する」と、地元は歓迎ムード。建設候補地の中心部に位置する岩手県一関市の勝部修市長は、市役所にILC推進課を作り、国際化推進員として日本語も堪能な豪州出身のネイト・ヒルさんを採用するなど、誘致実現に手を尽くす。
商工会議所が中心となった「岩手県国際リニアコライダー推進協議会」は今年7月、国内誘致の早期決定などを求める「県民決議」を採択した。懇親会に駆けつけた達増拓也知事は「オール岩手でがんばろう」と気合を入れた。
■中国も計画
陽子は電子より重く、陽子の衝突実験は電子よりエネルギーがはるかに大きくなる。だが、陽子はクォーク三つでできた複合粒子であるために反応が複雑で、実験の解析が難しい。
その困難を乗り越えてヒッグス粒子は発見された。ヒッグス粒子のつくり方がわかったことで、今度は狙いを定めた実験が可能になった。
ILCは、電子と陽電子という、これ以上分割できない基本粒子どうしを衝突させるので反応がシンプルで解析しやすい。また、ヒッグス粒子をたくさんつくれるほど高いエネルギーまで電子を加速するには円形だとロスが大きすぎ、直線形が適している。ただ、直線形で電子を正面衝突させるには高い技術力が必要だ。
一方、中国は円形でも大きくすればできると考え、超巨大円形加速器「CEPC」を計画する。1周約50キロ、最大で70キロまでという想定。建設費は35億ドル(4340億円)と欧州に造る場合の半額という。将来、同じトンネルに陽子加速器を建設する構想も持つ。
(朝日新聞デジタル)
費用1兆円以上で作るメリットはあるのだろうか。
将来的に、核廃棄物の保管に使えるのならば、安いのだろう。
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