外国産アサリが「熊本県産」に偽装されていた問題を受け、県産アサリ再生への機運が高まっている。偽装の実態解明は行政や捜査機関に委ねるしかないが、志ある漁業者は「今できることをやる」と春の出荷再開を見据える。幼生から稚貝、成貝へと育て、“天敵”対策でハウス栽培のように網で保護し、土壌も改良する-。打開策は「アサリ農業」への発想の転換だ。 潮が満ちた八代海の干潟を前に、アサリ漁師の4代目、宮田直樹さん(36)は目を細めた。「あいつらも生き物。かわいいんですよ、稚貝って」。手塩にかけて育ててきただけに、アサリ愛は強い。 県産アサリの漁獲量のピークは1977年の6万5732トン。全国シェア4割を誇ったが、20年は21トン、21年は35トンと激減した。豪雨による干潟の淡水化で成貝が全滅する被害もあった。そんな中、宮田さんは行政や研究機関の力も借りながら試行錯誤してきた。 アサリの幼生は春に干潟に着底し、稚貝へと育つ。宮田さんは砂の質や潮流を見ながら、稚貝が増えそうな場所を経験と勘で探し、網をかぶせる。「手間はかかるけど、網なしでは食い尽くされる」 この手法を推奨するのが、長くアサリの研究を続ける県立大の堤裕昭教授(海洋生態学)だ。「近年の激減の原因は食害」と断言する。5月前後には海水温の上昇で増えたナルトビエイが沿岸を襲い、アサリなどの二枚貝を捕食。秋以降は無数のカモが無防備のアサリを食べ尽くす。堤教授は「原因を排除すれば再生できる。網で守り、ハウス栽培のように育てれば確実」と話す。 食害以外で近年、問題視されているのが、ホトトギスガイの大増殖。干潟の表面を粘着性の泥のような状態に変え、砂の中のアサリを窒息死させてしまう。 宇土半島の有明海側の網田(おうだ)漁協(宇土市)は、このホトトギスガイ対策にトラクターを活用。干潟を耕し、土壌を整える。さらに編み目の袋に砂や砂利を入れて干潟に置き、アサリの幼生を着底させる手法も確立。一袋に3千~8千の稚貝が勝手に入り、「網に入った稚貝はストレスが少なく成長が早い」と言う。 集めた稚貝は網やかごで保護し、沖の漁場で育てる。種から苗を作り、畑に移して育てる野菜の栽培にも似ている。浜口多美雄組合長(71)は「7年がかりで技術を確立した。人間が汗を流し、お手伝いすればアサリは増える。農業と一緒ですよ」と自信を深める。 「今、大切なことは、熊本から本物の正しいアサリしか出さないこと」と浜口組合長。宮田さんも「本物を全国の人に味わってもらいたい。食べれば外国産との違いが分かるはず」。本物にこだわる漁師は、偽装問題をチャンスととらえている。 (古川努)
**************************************************************
国産が少なければ、中国産か、食べないの選択しかないでしょう。
0 件のコメント:
コメントを投稿