【ロンドン=板東和正】中国新疆(しんきょう)ウイグル自治区からアラブ諸国に移住したウイグル人が現地で拘束されたり、中国に強制送還されたりする事案が欧米メディアで相次いで報じられている。中国が経済的につながりの深いアラブ諸国に拘束や送還を要請しているもようだ。欧米メディアや亡命ウイグル人の組織「世界ウイグル会議」の幹部は、アラブ首長国連邦(UAE)に「ブラックサイト」と呼ばれる中国の秘密収容所がある可能性も指摘している。
英スカイニューズ・テレビは9日、中国の要請によりアラブ諸国で拘束されたり、中国に強制送還されたりしたウイグル人は2001年以降で290人以上にのぼるとの推計を報じた。UAEのほか、エジプト、モロッコ、カタール、サウジアラビア、シリアが中国のウイグル人弾圧に加担していると分析した。
スカイニューズや米CNNテレビによると、UAEに住むウイグル人男性、アーマドさんは2018年2月、ドバイ警察から急な出頭要請を受け、拘束された。アーマドさんは中国に送還される直前、妻に「中国の脅威がUAEの家族にまで及んでいると確信した」と話していたという。
ドバイに存在するとされる「ブラックサイト」の目撃情報も報じられている。スカイニューズやAP通信によると、漢民族の女性、ウー・ファンさん=当時(26)=は昨年5月、婚約者が香港の民主化デモを支持していたためにドバイ警察に拘束され、3階建ての邸宅に連行された。
この邸宅では金属製の扉がある独房のような小さな部屋に押し込まれ、警備員に中国語で「絶対に出られない」と脅された。邸宅に数日間閉じ込められている間、ウイグル人とみられる女性が「中国に帰りたくない、トルコに帰りたい」などと叫んでいるのを聞いたという。
英国の人権専門家によれば、この邸宅は、中国が海外でウイグル人を拘束し、尋問するための秘密収容所である可能性がある。
英メディアによると、中国はUAEに6千社以上の企業を進出させるなど経済的なつながりが深い。世界ウイグル会議の英国所長、ラヒマ・マフムト氏は産経新聞に「中国政府の意向をくむ一部の国が人命よりも経済的利益を優先し、ウイグル人を拘束している」と指摘。ドバイ以外にも「ブラックサイト」が存在する可能性があるとし、「中国による国境を越えた抑圧と支配のシステムが浸透している」と危機感を示した。
スカイニューズはUAEなどにコメントを求めたが9日時点で返答を得られなかった。新疆ウイグル自治区の広報担当者はスカイニューズに「中国が海外にブラックサイトを設置するのは不可能だ」と否定した。
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国際社会は、中国の人権侵害を許してはいけない。
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