フィギュアスケート女子のカミラ・ワリエワ(15)がドーピング検査で陽性になったことが報じられた問題が波紋を広げている。北京五輪の〝女子の主役〟はロシア・オリンピック委員会(ROC)の一員として獲得した団体金メダルの剥奪に加え、個人戦も失格の危機に直面している。こうした中、本紙はアンチドーピングの専門家に緊急取材。今後の行方と、後を絶たない違反行為の実態に迫った。
ROCはフィギュア団体戦で金メダルを獲得したが、8日のメダル授与式が急きょ中止に。複数のロシア有力紙はワリエワが大会前に提出したサンプルから禁止薬物トリメタジジンが検出されたと報じた。ただ、国際オリンピック委員会(IOC)のマーク・アダムス広報部長は10日の会見で「現在進行中の法的な問題。この場でコメントするのは不適切だ」と言及せず。保護対象者の16歳未満は名前を公表できない事情もあり、真相は〝闇〟に包まれている。
いったい金メダル大本命のワリエワはどうなるのか。日本アンチドーピング機構規律パネル委員長の早川吉尚氏は「一般的に15歳の子が自らドーピングの知識を持って違反するとは考えづらく、コーチなどに詳細がわからない薬を勧められるケースが多い。それが明らかになると情状酌量となり得ます」と語る。それを踏まえ、仮に〝クロ〟だった場合でも「情状酌量により資格停止が短縮されることはあると思う。しかし、個人戦に出場するには〝シロ〟である必要があります。ただ、その可能性は極めて低いでしょう」と指摘した。
また、団体戦の金メダルについては「未成年だろうが情状酌量だろうが、体内に禁止薬物が入った状態で行われた記録は全て抹消されます。たとえ他人にだまされて飲んだ場合でもアウト」(早川氏)。つまりワリエワの陽性が事実なら、自動的にROCの金メダル剥奪と、日本の銀メダルへの繰り上がりが決定するのだ。
それにしても、ロシアと言えば、かねて国ぐるみの組織的なドーピング違反を犯した〝前科〟がある。今大会も国としての参加が認められていない中、意図的に禁止薬物を服用させることなどあり得るのか? その実情について、アンチドーピングの専門家でもあるA氏が「実名を伏せる」との条件で詳しく解説してくれた。
「勝つために何でもやる国ってあるんですよ。選手団には〝悪魔の医者〟がついていて、体内から禁止物質が消える日数を逆算して服用させる。今、捕まっているケースはすべてそれ。金メダルのために尿の入った試験管を肛門に隠した選手もいましたから」
一部報道でワリエワから検出されたとされるトリメタジジンは、血行を促進して長時間の運動が可能になる禁止薬物。A氏は「瞬発力が優れていてもスタミナがない選手がこの種の薬物を飲むケースはたくさん存在します。いわゆる独裁国家では国威発揚のために五輪をやっている。選手やコーチは常に〝構造的プレッシャー〟をかけられていて、我々の感覚では考えられない世界なんですよ」と声をひそめた。
今大会は様々な疑惑がつきまとう〝暗黒五輪〟と化しているが、果たしてワリエワはどうなるか。今後の動きから目が離せない。
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勝つためには何でもやる国があるのでしょう。選手も金メダルで人生が変わるでしょう。
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