仮想通貨ビットコインの取引所を運営するマウント・ゴックス(東京、破産手続き中)から大量のコインや預かり金がなくなったとされる事件で、社内システムを不正に操作し、自身の口座に100万米ドルを水増ししたとして、警視庁は1日、フランス国籍の最高経営責任者(CEO)、マルク・カルプレス容疑者(30)=東京都豊島区=を私電磁的記録不正作出・同供用容疑で逮捕し、発表した。
捜査2課によると、カルプレス容疑者は2013年2月中旬、社内システムを2回、不正に操作し、自身の名義の社内口座に100万米ドル(約1億2400万円)が入金されたとするうその情報をサーバーに記憶させ、残高を水増しした疑いがある。「納得できない」と容疑を否認しているという。
同社は昨年2月、管理していた85万ビットコイン(時価300億円)や銀行口座の現金最大28億円がサイバー攻撃を受けて消失したと発表。警視庁に相談していた。しかし、警視庁が任意提出を受けたコンピューターに残された取引履歴などを解析した結果、システムを操作できるのはカルプレス容疑者だけだったことが判明。カルプレス容疑者自身がデータを書き換え、紛失したように見せかけていた疑いが強まったという。
捜査2課は、カルプレス容疑者が、水増しした100万ドルをビットコインに交換し、さらに現金に換え、銀行口座から引き出していたとみている。同課は、引き出された現金をカルプレス容疑者が会社の運転資金などに充てていた疑いがあるとみて、業務上横領容疑でも調べる。
同社はビットコインを交換する私設の取引所を運営していた。顧客の大半は外国人で、日本人は1%程度だった。同社を通じて取引されるビットコインは一時、世界の7割を超え、110万以上の口座が登録されていたという。
カルプレス容疑者はこれまでの朝日新聞の取材に対し、元従業員による犯行を示唆する一方、「自分が疑われるのはしょうがない。だから自分で調べるしかない」などと話していた。(中野浩至、高田正幸)
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〈ビットコイン〉 インターネット上でやり取りされる仮想通貨。中央銀行などの管理者はなく、世界各国にある取引所を通じて円やドルなどの通貨と交換できる。2009年から出回っているが、開発者はわかっていない。相場は需要と供給の関係で変動し、投資目的での利用が多いとされる一方、一部の店では決済にも使える。1日現在、1ビットコインは約3万5千円で取引されている。
(朝日新聞デジタル)
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