「ダボハゼ」
一般的にあまりいい響きはない。文献によれば、釣りの際、なんでもかんでも食いつく雑魚(ザコ)。さらにそれを野球に例えると、相手投手の術中にハマる早打ちの打者で「一丁あがり!!」のダメな形容に使われることが多い。
だから、なんだっつうのよ!! ここに異議を唱えるのは楽天・大久保博元監督(48)だ。
「選球眼から入る打者に一流はいないですよ。振りたい、打ちたい、当てたい…という“ダボハゼ”のような打者こそ、一流になっていくと思います。だって、打者がバットを振らなければ、何も起こらないでしょう」
同感だ。プロ野球の取材現場(ファンも同様)で、見逃し三振ほど興ざめすることはない。さらにプロ野球の世界では、カウント途中の見逃しにも首脳陣の監視が入る。
試合前のミーティング(相手投手の研究)。早いカウントでの狙い球をさんざん絞っておきながら、いざとなるとバットが出ない。結果、追い込まれ、パニックとなり凡退。若手選手の場合、最悪のケース、翌日には2軍送りだ。
実際、2ストライクに追い込まれると、どんなにすごい打者でも極端に分が悪い。あのイチロー(マーリンズ)だって打率は2割台だし、今季大ブレークしている山田(ヤクルト)も3割には満たない数字となっている。
そこで、クローズアップされるのは、今夏の甲子園大会で脚光を浴びた早実高・清宮幸太郎内野手(1年)。とにかく、積極果敢なバッティングで“ルーキー”とは思えない好成績を残した。
準決勝で早実高に快勝した仙台育英高の佐々木監督は、その清宮を5打数1安打と封じ、「早打ちに助けられた」と勝因を語った。もちろん、それは戦術勝ちだったが、半面、清宮側に立てばデビュー間もないキャリアの部分もある。
今後、多くの場数を踏んでいくであろう清宮に「好球必打」の姿勢だけは失ってほしくない。相手投手に球数を多く投げさせるのは、周囲のおぜん立てだ。真打ちは「ダボハゼ」でいい。清宮の魅力は一撃必殺にある。
(プロ野球遊軍・西村浩一)
(サンケイスポーツ)
0 件のコメント:
コメントを投稿