首相補佐官が参考人として国会審議に出席するのは、1996年の補佐官制度創設以降初めて。
礒崎氏は7月26日に大分市での講演で、集団的自衛権の行使容認を「必要最小限度という憲法解釈は変えていない」と指摘。そのうえで安全保障環境の変化に言及し「何を考えないといけないか。法的安定性は関係ない」と発言。法案成立時期について「9月中旬までに終わらせたい」と述べた。
礒崎氏は参考人質疑の冒頭、「軽率な発言により、審議に多大な迷惑をかけたことを国民、与野党に心からおわびする」と謝罪。法案成立時期を巡る発言については「極めて不適切であった」と述べたが、鴻池祥肇委員長は「いかがかと思う」と苦言を呈した。
野党を代表して質問に立った福山哲郎氏(民主)は「政府は『法的安定性を維持している』と強弁しており、ちゃぶ台をひっくり返したも同然だ。責任は重い」と辞任を要求。礒崎氏は「本来なら『法的安定性とともに国際情勢の変化にも十分配慮すべきだ』と言うべきなのを誤って言った。決して法的安定性全体を否定したわけではない」と説明した。
福山氏はさらに、礒崎氏が講演前日にも「法的安定性で国を守れるか。そんなもので守れるわけない」などと発言していたと紹介し「なぜ辞めないのか」と追及。礒崎氏は「前日の発言も、私が誤った発言をしたものだ。発言を取り消し、おわびをさせていただいた。今後は首相補佐官の職務に専念することによって責任を果たしたい」と語った。
7月28日に首相から「誤解を生むような発言をすべきではないので注意をしなさい」と言われたことを明らかにしたが、「進退についての言及はなかった」と述べた。
福山氏はまた、礒崎氏が雑誌のインタビューで、集団的自衛権の行使容認は「憲法違反」との指摘に対し「そういう主張をしている人はあまり見当たらない」と発言したと紹介。礒崎氏は「取材があったのは4月上旬だ。きちんとした根拠もなくそのような発言をしたことは軽率であった。おわび申し上げる」と謝罪した。福山氏は「この補佐官を任命し続ける首相の責任は大きい。礒崎氏の発言の真意が国民に伝わったとは思わない。引き続き辞任を求め、居続ける限り発言を追及していく」と述べた。【青木純、小田中大】
◇礒崎氏の26日の講演での発言要旨
最高裁は砂川事件判決で「日本には自衛権がある」としたが、中身については何も言わなかった。だから、政府が「わが国の自衛権は必要最小限度でなければならない。集団的自衛権は必要最小限度を超えるから駄目だ」と解釈してきた。その後、北朝鮮がミサイルを開発し、中国も軍備を拡張している。40年たって時代が変わったので「集団的自衛権でも、わが国を守るためのものなら良いのではないか」と提案している。何を考えないといけないか。法的安定性は関係ない。わが国を守るために必要な措置であるかどうかを基準にしないといけない。
◇礒崎陽輔首相補佐官の答弁の主なポイント
・発言により、特別委員会の審議に多大な迷惑をかけ、国民、与野党に心からおわび申し上げる
・安全保障環境の変化も議論しなければならないことを述べる際、「法的安定性は関係ない」という表現を使い、大きな誤解を与えた。発言を取り消し、おわびする
・(「9月中旬までに終わらせたい」という)平和安全法制の成立時期の発言も深くおわびする。極めて不適切だった
・今後は特別委の審議に迷惑がかからないよう首相補佐官としての職務に精励する
【ことば】法的安定性
法律の解釈や体系は確固たるもので、むやみに変えてはいけないという考え方。行政や司法が法律に基づいて行われる「法治国家」の原則の一つで、法的安定性が揺らぐと法律への信頼が失われたり、社会が混乱したりする恐れが指摘されている。政府は昨年7月、憲法解釈を変更して集団的自衛権の行使を容認したが、1972年の政府見解で認めた「わが国の存立を全うするために必要な自衛の措置」の枠内で、従来の解釈の「基本的な論理」は保たれ、法的安定性は確保されていると主張している。
(毎日新聞)
もう幕引きだろう。
野党は、新たな戦術を考えないと。
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