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2015年10月30日金曜日

安倍政権、米と連携=事態緊迫なら難しい判断-南シナ海

 中国が南シナ海に建設した人工島の12カイリ(約22キロ)以内に米国が軍艦を派遣したことを受け、日本政府は「米国をはじめ国際社会と連携していく」(安倍晋三首相)との立場を明確にした。ただ、米軍支援のための自衛隊派遣には現時点では慎重だ。9月に成立した安全保障関連法は、中国の海洋進出を踏まえ日米同盟強化に主眼を置いており、事態の推移によっては安倍政権が難しい判断を迫られる可能性もある。

 ◇自衛隊派遣には慎重

 菅義偉官房長官は27日の記者会見で「現状を変更し、緊張を高める一方的な行動は国際社会共通の懸念事項だ」と、南シナ海での中国の活動に重ねて懸念を表明。「開かれた、自由な、平和な海を守るために国際社会が連携していくことが重要だ」と指摘した。
 一方、中谷元防衛相は会見で「現在のところ、具体的な対応を行う計画は有していない」と説明した。防衛省幹部は現時点での南シナ海での自衛隊活動について「その準備もないし、能力もないし、意思もない」と強く否定。海上自衛隊幹部も「尖閣諸島問題を抱える東シナ海の方がはるかに重要だ。南シナ海への派遣は力の分散につながり、現実性が低い」と語った。
 今回の米艦派遣に先立つ今月15日、米海軍制服組トップのリチャードソン作戦部長が安倍晋三首相や中谷氏と相次いで会談。日本政府による今後の協力の可能性を探った可能性もある。中谷氏は会見で「わが国の安全保障に与える影響が拡大する中、南シナ海の状況にどう対応するかは十分検討すべき課題だ」と指摘した。

 ◇重要影響事態なら後方支援も

 では、今後想定される日本の対応にはどんなものがあるのか。9月30日の公布から6カ月以内に施行される安全保障関連法には、朝鮮半島有事を念頭に米軍への後方支援を定めた旧周辺事態法から地理的概念を外した重要影響事態法が盛り込まれた。これにより、政府が「日本の平和と安全に重要な影響を与える事態」と認定すれば、自衛隊による米軍への後方支援は南シナ海を含む地球規模で可能となる。
 首相は5月の国会審議で、南シナ海情勢が緊迫化した場合の重要影響事態の適用に関し、「可能性があればこの法律を使えるようにする」と明言した。今回の事態に適用されれば、自衛隊は中国軍と対峙(たいじ)する米艦船に対し、水や食料の補給だけでなく、弾薬の提供や発進準備中の航空機に対する給油も行うことができる。
 さらに、仮に重要影響事態での自衛隊の活動中、事態がエスカレートして米中の本格的な武力衝突に発展した場合、米国への攻撃を「日本の存立が脅かされる明白な危険がある」と見なせば、安保法が定める存立危機事態を適用し、集団的自衛権に基づく武力行使も選択肢に入ってくる。
 安保法の施行前でも、公海上では自衛隊は警戒・監視が可能だ。中谷氏は8月の国会審議で、南シナ海での日米共同の警戒監視活動について「今後検討していくべき課題」と指摘している。
(時事通信)

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