2020年東京五輪の公式エンブレム問題が拡大している。「盗作は明白」と主張するベルギーの劇場側は提訴し、制作者の佐野研二郎氏(43)は自身が手掛けた別の作品で模倣を認め、イメージダウンが指摘される。大会組織委員会は使用を継続する方針だが、スポンサーには懸念が見られ、白紙撤回となった新国立競技場計画に続く騒動に関係者には困惑が広がる。
■謝罪し波紋
公式エンブレムは、五輪開幕まで5年となった7月24日、東京都庁でのイベントで発表された。デザインは東京などの頭文字「T」をイメージし、多様性を示す黒と鼓動を表す赤の円が特徴だ。
一方、ベルギー・リエージュ劇場のロゴのデザイナーが「驚くほど似ている」と主張した他、インターネット上で別のマークと似ているとの指摘が相次いだ。8月5日、佐野氏は記者会見で「全くの事実無根だ」と盗用を否定したが、劇場側は14日、国際オリンピック委員会(IOC)に使用差し止めを求めて地元裁判所に提訴したと発表した。
同日、佐野氏は代表を務める事務所のホームページで、サントリービールのキャンペーン賞品に他の作品の模倣があったことを認めて謝罪した。事務所のスタッフが佐野氏の管理の下で作成し、自身の作品ではなかったが、エンブレムが疑問視されているだけに波紋が広がった。
■残念至極
エンブレムは既にテレビCMや広告に使われている。組織委のスポンサーは国内最高位の「ゴールドパートナー」の場合、1社150億円以上と言われる協賛金を出し、エンブレムを使用する権利などを得る。ある最高位の企業からは「(盗作と)言われるのはよくない。使いづらい」との声が漏れる。
東京都の舛添要一知事は21日、ツイッターで賞品の模倣問題を「不祥事」とし「彼(佐野氏)の信頼性失墜は免れないし、エンブレムのイメージすら悪化しかねない。私には何の権限もないが、残念至極である」と懸念した。
デザイン界では、エンブレムには「シンプルにデザインすると似ることはある。盗用とはいいにくい」と問題視しない見方が当初からある。
ネット上では佐野氏個人を中傷する記述も目立つが、ネット問題に詳しい文芸評論家の藤田直哉氏は「ネットでは論理的な証拠判断よりも印象操作が先行し、当事者に不当なダメージを与えてしまう危険性がある」と話す。盗用かどうかの判断には高度な専門性を要する点に着目し「盗用という安易な決め付けや個人攻撃は慎むべきだ」と語る。
■踏ん張りどころ
エンブレムなどの知的財産を日本国内で管理する組織委は「適切な手続きを経て選んでおり、使用を続ける」(幹部)との姿勢だ。選考過程が不透明との批判もあるが、槙英俊マーケティング局長は「密室性はない」と反論する。
組織委によると、選考は昨年11月17日と18日に行い、審査委員が先入観を持たないように制作者名を伏せて実施。104の応募作品を対象に、委員8人が4回の投票の末に四つに絞った。最後は委員が協議し、動画などで多彩な活用が期待できることが決め手となって佐野氏の作品を選んだ。
国際的な登録商標の調査では、同様に「T」をモチーフとした商標が多数あったため、デザインを微修正してことし4月に最終形を固めた。その後本格的な商標調査を1500万円かけて実施し、発表にこぎつけた。
賞品の模倣問題について組織委は「別の話」との立場だ。ある関係者は「今が踏ん張りどころ」と早期収束を期待した。
(夕刊フジ)
五輪エンブレムだけであれば、シンブルなデザインが、たまたま似ていたと言い訳できたが、次々に盗作模倣疑惑が明らかになった段階で、完全にアウトなんだろう。
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