発覚のきっかけは、米ウェストバージニア大の研究だ。2012年、研究チームは欧米が拠点の非営利組織「クリーン輸送のための国際会議」(ICCT)の依頼で、ディーゼル車の排ガスに含まれる窒素酸化物(NOx)を測定することになった。5万ドル(約600万円)の研究委託費がついた。
「VWの規制逃れを暴こうなんて思っていなかった。欧州車がいかに環境性能に優れているか立証し、普及に一役買おうと思っていた」。5人のメンバーの一人、アービンド・ティルベンガダムさんは朝日新聞の取材に振り返る。
13年春、カリフォルニア州で実験を始めた。実際に道路を走りながら計測する装置を活用した。
結果は想定外だった。VW「ジェッタ」から基準の15~35倍、「パサート」から5~20倍のNOxが出た。「予想と正反対で驚いた」とティルベンガダムさん。何度やり直しても同じデータが出た。「達成感より、VWへの失望が強い」。14年5月、EPAやカリフォルニア州の大気資源委員会(CARB)などに報告した。
当局は「報告書の精度が高い」と判断。翌6月にVWと協議を始めた。朝日新聞の取材に、CARB幹部は「実は11年ごろから、VWに限らず欧州のディーゼル車のデータに疑いを持ち、欧州当局と話し合っていた。報告書は大いに助けになった」と明かす。
当局側は様々なデータを用意したが、協議は難航した。大学の調査結果についてVWは説明を拒否し、何があったのか語ろうとはしなかったという。
このため、CARBもウェストバージニア大の協力を得ながらVW車のテストを重ねた。そしてエンジニアたちは「ディーゼルエンジンの非常におかしな動作」に気づく。
ハンドルを動かさない通常の試験では排ガスを浄化する装置が作動し、ハンドルを動かしたときは作動しなかった。違法なソフトが組み込まれていることが明確になった。
(朝日新聞デジタル)
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