日歯連は、全国の歯科医が加入する日本歯科医師会を母体とする政治団体。全国に5万人以上の会員を抱える。1950年の第2回参院選から組織候補を擁立し、当選した議員らを通じて診療報酬の改定などに業界の意見を反映させる活動を続けてきた。2007年と13年の参院選で当選した石井みどり氏、10年に議席を得た西村正美氏は、ともに歯科医から議員になった。
日歯連の政治力を支えてきたのが「30万票」とも言われる集票力と豊富な資金力だ。日歯連の会費は年1万1500~2万3000円。毎年10億~13億円もの資金が集められる。選挙では全国の会員をフル稼働させ、組織丸抱えで当選を勝ち取ってきた。
だが、業界を取り巻く環境は厳しい。02年に9万人余だった歯科医は12年には10万人余に増えた。診療所も13年には約6万8000カ所に達し、「コンビニより多い」と言われる。全体の医療費が04年度の約31兆円から14年度は約40兆円に増える一方、歯科医療費はこの10年間、2兆円台で横ばいが続く。競争が激化する中、12~13年の1年間に約1400の診療所が廃業した。
現場の政治離れを加速させたのは04年の自民党旧橋本派への1億円ヤミ献金事件だった。事件後に診療報酬が引き下げられ、この10年で日歯連の会員は約1万人減った。10年近く前に連盟を脱会した都内の男性歯科医は「これだけ歯科医が食えなくなる中、会費を払うだけでも手いっぱい」と話す。
危機感を抱いた日歯連は、政治力を維持するために選挙に力を入れたとみられる。石井氏の再選を目指した13年参院選では、全国の会員に「1人当たり5人」とノルマを掲げて支持者集めの指示を出し、初当選した07年より約7万票多い29万票余りを獲得した。その背景で「迂回(うかい)寄付」をしたとして、前トップら3人が逮捕されたのが今回の事件だ。
関東地方のある歯科医師連盟会長は「逮捕以降、退会希望が相次いでいる」と嘆く。10年参院選の選挙支援に関わった日歯連幹部の一人は自戒を込めて語った。「執行部は現場の歯科医より政界を重視しすぎた。会員数が先細っているのに政治にすがることしか考えていないから、こんな事件が起きてしまったのではないか」【飯田憲】
(毎日新聞)
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