政府与党が12月8日にまとめる2017年度税制改正大綱で、麦芽比率や原料によって異なる「ビール系飲料」にかかる酒税額の統一が加わる見込みだ。現在、ビール77円、発泡酒47円、第三のビール(新ジャンル)28円の税額(いずれも350mlあたり)をおよそ10年後の2026年10月までに、段階的に一律55円にする方針だという。税制が専門の立正大学法学部客員教授の浦野広明氏が解説する。
「改正内容は財務省の提案通りの内容で、同省の意向に沿ったものと言っていいでしょう。ビール系飲料それぞれの標準小売価格を基に計算すると、税率はビールで35%が25%に下がる一方、発泡酒は29.5%が34%に、第三のビールは20%が42%と倍以上に跳ね上がります」
350ミリリットル缶の価格に換算すると、ビールが1本あたりの税額が22円下がる(77円→55円)のに対し、発泡酒は8円アップ(47円→55円)、第三のビールは27円アップ(28円→55円)に値上がりする計算となる。
◆取れるところから取れ
350ミリリットル缶の価格に換算すると、ビールが1本あたりの税額が22円下がる(77円→55円)のに対し、発泡酒は8円アップ(47円→55円)、第三のビールは27円アップ(28円→55円)に値上がりする計算となる。
◆取れるところから取れ
ビール市場が1994年のピーク時から約25%縮小するなか、「安くてビールに劣らぬ美味さ」でシェアを拡大し、“家飲み”の主役に躍り出たのが発泡酒や第三のビールだ。前出の税制改正大綱を取りまとめる自民党税制調査会幹事の竹本直一・衆院議員に話を聞いた。
「同じような味のお酒なのに税金や価格が大きく違うのは税制的に不適切との声が以前からあり、この不公正を是正するという目的がまず1点。加えて、日本のビールは割高だとの世論も根強く、価格の押し上げ要因となっているビールにかかる税額を改める必要があると考えたためです」
日本のビール税が諸外国と比べて非常に高いのは事実だ。アメリカの9倍、ビール大国ドイツの19倍に達し、日本では酒類の中で最も高い税率が課せられている。ただし、それは「“取る側の論理”ではないか」と指摘するのは前出の浦野氏である。
「“不公正の是正”や“一律課税”など、一見公平な印象を与える今回の税制改正ですが、それらはカモフラージュに過ぎません。税の基本は負担能力に応じた課税です。本来は、高級な酒の税率を高くして、第三のビールのような庶民向けの飲料は低くするというのが税法上の正解です」
経済ジャーナリストの荻原博子氏もこう話す。
「発泡酒や第三のビールの普及は企業努力の賜物です。それを増税のターゲットにするのは、産業政策としてもおかしい。家計にとって大きなマイナスとなるし、今回の改正は庶民イジメの“税制改悪”に他なりません」
※週刊ポスト2016年12月9日号