来年3月に第4回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)を控える侍ジャパンは、強化試合最終戦でオランダにタイブレイクの末、競り勝ち3勝1敗とした。7回先頭、代打の大谷が、東京Dの天井に消える規格外の二塁打。これをきっかけに一挙6点を奪い試合を振り出しに。連夜のタイブレイクとなった延長10回、鈴木の満塁弾で試合を決めた。WBCは来年3月6日にソウルで開幕。日本は同7日から東京Dで行われる1次ラウンドB組でキューバ、オーストラリア、中国と対戦する。
誰もが目を疑った。大谷の強烈な打球は東京ドームのライト方向に飛び、勢いよく天井へ伸びると、突然消えた。大歓声で沸いていたスタンドが一転、騒然となる。判定を下すはずの審判団も右往左往。主人公だけはニヤニヤと両手を広げ、ダイヤモンドを駆けた。
「出塁することだけを考えてました。打球は見えてました。打った瞬間、飛距離は十分だと思った。あとは打球が切れるかを見てました」
1分後。審判団が170メートルは飛んでいるであろう一打を協議した結果、グラウンドルールに沿い認定二塁打に。劣勢で静まり返っていた侍ベンチが、沸きに沸いた。
6点ビハインドの7回先頭、大野の代打で登場した。この日一番の大歓声を背中に受け、2ボールからの3球目。右腕・フロラヌスの内角高めに抜けてきた141キロ直球を、思い切り振って出た。東京Dの天井に消えた二塁打は2002年7月18日横浜戦の巨人・松井秀喜以来、2度目の珍事。3試合連続安打は、誰も想像できなかった“ゴジラ級”の一撃となった。
「(天井に打球が)入ったところがインフィールド。ルール上で二塁打と分かっていたが、一応ホームまで走りました。松井さん以来? それは知らなかったです」
規格外の一打が、6回まで4安打2点と眠っていた侍打線の目を覚ました。5連打を含む6長短打で一挙6点。面白いようにつながり同点に追いついた。6番でスタメン出場した前夜は4点を追う5回先頭で右翼最深部を襲う140メートル弾を放ち、侍打線も1イニング6得点と爆発した。2夜連続で6点のビッグイニングを演出。広島・鈴木の代名詞でもある「神ってる」を日本代表で具現化したかのような神懸かりっぷりだった。
「いい状態で打席に向かうことができた。相手選手を観察しながら、自分でも試せた。いい経験ができたと思っています」
敬遠ブーイング 人生初の日本一から約2週間。この強化試合中は連日のように筋力トレに精を出している。
「強化試合を見据えては、やっていない。もうオフのトレーニングに入らないと。(シーズン中の)試合という感じでは入りません」。
そんなオフの猛練習へシフトする段階で、想像を超える一打を放ったのだから驚きだ。WBCでは侍のエースとして期待されるが「打者・大谷」も捨てがたい。小久保監督にとっては、うれしい悩みになるだろう。大谷はこう力を込める。
「そこ(WBC)を見て調整したい。起用されたところで、いつでも活躍できる準備ができれば」
打者一巡した同点の7回2死二塁。場内が大ブーイングに包まれる中、敬遠四球。それは世界が「OHTANI」のバットの圧倒的なパワーを、認めた瞬間だった。(小谷 真弥)
(スポーツ報知)
規格外の170メートルはすばらしい。
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