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2015年10月4日日曜日

フォルクスワーゲン 罰金2兆円超、ブランド価値も失墜…VWが支払う高い代償

 米環境保護局(EPA)は18日、独自動車大手フォルクスワーゲン(VW)が排ガス規制逃れのために一部ディーゼルエンジン車に違法ソフトウエアを搭載していたと告発した。EPAはVWが意図的に規制当局を欺こうとしていたとみており、2兆円以上の罰金を科される可能性も。VWの最高経営責任者(CEO)、マルティン・ウィンターコルン氏(68)は経営責任を問われて辞任に追い込まれた。今回のEPAの告発は米国の非営利団体(NPO)がVWの環境性能の高さを証明しようとして始めた調査がきっかけだ。売り物にしてきた「クリーン」なブランドイメージを裏切ったVWは高い代償を支払う形になりそうだ。

 ■罰金だけで2兆円以上か

 「違法ソフトを使って排ガス規制を逃れることは不法行為であり、人々の健康に脅威をもたらす」。EPAは18日に発表した声明で、VWの行為は大気浄化法違反の疑いがあると告発した。

 EPAによると、VWグループは2008年以降に米国内で販売したディーゼルエンジンの乗用車約48万台に違法ソフトを搭載。研究施設での試験中には排ガス浄化機能をフル稼働させ、実際の走行時には浄化機能を大幅に低下させることができるという。米メディアは「浄化機能を低下させれば燃費が向上する」として、購入者に燃費の良さを実感してもらう狙いがあった可能性を指摘している。

 EPAはVWに対して最大180億ドル(約2兆1600億円)の罰金を科すとみられている。またVWは違法ソフトが搭載された車は1100万台に上るとしており、リコール(回収・無償修理)が命じられれば対応費用がかさむ恐れが大きい。米国ではVW車の所有者を代表して損害賠償などを求める集団訴訟も起こされている。

 ■経営陣に刑事責任も

 こうした事態を受けて、ウィンターコルン氏は23日、「責任を受け入れる」として辞任の意向を表明した。ウィンターコルン氏自身は違法ソフトの存在を知らなかったと釈明しているが、米ニューヨーク州やドイツの司法当局がVWへの刑事捜査を始めることを表明。米司法省も同様の調査に着手したと報じられており、VW経営陣の責任は今後も厳しく追及されることになりそうだ。

 EPAによる告発のきっかけとなったのは、自動車などの環境性能の向上を目的とした米国のNPO「国際クリーン交通委員会(ICCT)」が米ウェストバージニア大学に依頼して、13年に行った独自の環境性能調査だ。

 米通信社ブルームバーグによると、このICCTは米国の排ガス規制が欧州よりも厳しいことに着目。米国で販売されている欧州車は欧州で販売されている欧州車よりも環境性能が高いことを証明して、欧州でも厳しい排ガス規制を導入すべきだと主張するつもりだった。

 しかし実際の調査結果ではVWの乗用車「ジェッタ」と「パサート」では基準を上回る大気汚染物質を検出。同時に調査されたBMWの「X5」は基準をクリアしており、VWの不正行為の疑いが濃厚になった。ロイター通信によると、VWは当初、走行時の浄化機能の低下の原因は「技術的な問題」にあるなどと釈明していたが、EPAが16年型製品の承認を出さないことを示唆したために不正行為を認めたという。

 ■頼みのディーゼルで汚点

 VWは燃費の良さや力強い走りが特長のディーゼルエンジンの環境性能を高めた「クリーンディーゼル」の開発、販売を推進。販売台数が減少してきた米国でも巨額の広告費を投じてアピールし、米国の販売台数の2割以上がディーゼル車が占める。それだけに今回、ディーゼル車で問題が起きたことはVWにとっては大きなイメージダウンといえる。

 VWの14年の世界販売台数は1021万台で、この10年間で2倍近くに増えた。15年上半期の実績ではトヨタ自動車を抜いて首位に立ち、通年での首位も視野に入っている。しかし顧客の信頼を意図的に裏切るかたちでブランド価値を失墜させたことで、一気に先行きは見通せなくなった。巨額の賠償金負担が研究開発の遅れにつながる恐れもあり、VWの長期的な世界戦略に影響が及ぶ可能性もある。(ワシントン支局 小雲規生)
(産経新聞)

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