東京都内に住むバレエ講師のナナコさん(42)は、週に1日、子どもたちにバレエを教えながら、主婦として家事をこなす、いわゆる“ちょいキャリ”だ。大手金融機関に勤務する夫(50)との間には、現在、小学校5年生の男の子がいる。
そんなナナコさんと大学教員のセカンド・パートナー男性(45)との出会いは、「mixi」、つまり“SNS”だったという。
「家庭に何か不満があるか……といえば何もありません。夫はとても優しく、子どもも順調に育ってくれています。その恵まれたゆえの“退屈さ”が唯一の不満でした。だからこそ当時は、よくmixiを更新していました。家族で食事に行った様子、バレエの発表会、そして自撮り写真をアップしていたものです」(ナナコさん)
ナナコさんがSNSをはじめたのは今から約10年前、2005年のこと。この頃、ナナコさんは、「男性との出会いをまったく求めてはいなかった」という。確かに、夫の年収1400万円、東京郊外の一戸建てで暮らす生活には、日々の些細な不満はあっても特に不自由は感じていなかった。しかし、“転機”が訪れる。
「SNS内のあるコミュニティーで、私の書き込みにレスポンスをくれたのが“彼”でした。それが縁で個人的にメッセージ交換して“お友達”に……。でも、正直なところ、所詮“ネット上の人”です。実際に会うことなど想像もしていませんでした。だからやりとりを重ねるに連れて、気楽さもあって、いつしか夫への不満や子どもの教育問題も打ち明けるようになりました」(前出のナナコさん)
そんな“ネット上の人”から“リアルの人”に変化したのは、今から3年前。彼から「もしよろしかったらお会いしませんか?」というメッセージが送られてきたのだ。
「その時点で、もう7年近く2、3日に一度はメッセージ交換していたこともあり、お互いの家族構成もよくわかっていました。なので、不思議な安心感もあって。それで都内のホテルのラウンジでお会いしました。実際に会ってみると、“SNS上と変わらない人”という印象を受けました。だから打ち解けるのも早かったです」(同)
最初のデート以降、彼が都内に出る機会は、いつも食事や観劇、美術館観賞といったデートを重ねてきた。今では、かけがえのないセカンド・パートナーだ。お互いの家族や友人にもその存在を明かしている。
「ただ、家族にも友人にも、正直なところ『SNSで出会った』という話はちょっと気が引けるのでしていません。だから『友人の友人』の紹介で出会った――ということにしています」(同)
ナナコさんにみられるSNSを介した出会いは、セカンド・パートナーを持つ女性の間ではよく耳にするところだ。
大阪府に住むヒロミさん(44)もそんなSNSでセカンド・パートナー男性(50)を見つけた。ヒロミさんは地場食品メーカーに勤務する総合職、夫は公務員、小学校6年生の娘の3人暮らしだ。前出のナナコさんとは異なり、最初からセカンド・パートナーを探すため、SNSに参加した。しかし、いわゆる“出会い系サイト”の利用はしなかったという。
「出会い系サイトだと、いかにもそれを目的とした感じで気が引けてしまって……。あくまでも自然なお友達から入るという形を取りたかったので、SNSを活用しました。頻繁にSNSを更新すると、コメントして下さり、メッセージを熱心に送ってくれる方も自然と出てきます。そのうちの何人かと電話で話したり、お茶をしてたり、いちばん続く方と自然にそうなれました」(ヒロミさん)
このようにSNSはセカンド・パートナーを探すには絶好の場として機能している現実がある。ある心理学者はその理由について次のように語った。
「SNSでのやりとりは、趣味や価値観などが互いにわかるので、心的距離が縮まった状態になれる。だから、実際に会った際には、互いのすべてをわかった状態で会える。セカンド・パートナーというよりも“友人探し”の場として、SNSを活用できる側面がある。それが機能したと思います」
SNSは、趣味、価値観を開示することから、ネット上とはいえ“似た者同士”が集まる傾向がある。職場や趣味などのサークルでの出会いだと、互いの事情を打ち明け、関係が深まるまで時間がかかる。しかしSNSだとそれが省ける。女性はただみずからの思うこと、日常を綴っているだけで男性のほうから言い寄ってくるという環境、それがSNSといえよう。
さらに、複数のセカンド・パートナーがいる女性もいる。愛知県内に住むピアノ講師のカオリさん(44)だ。現在、大手メーカー勤務の夫(46)と中学2年の娘と暮らしている。
「私にはセカンドのほか、サード、フォース、フィフスのパートナーがいます。長年続いているセカンドの男性との出会いは、今はもう無くなりました『Yahoo! チャット』でした。サードはアメーバブログのピグチャット、フォースはmixi、フィフスはFacebookです。すべて男性から私に言い寄ってきた方ばかり。IT社会のおかげで多くの男性から愛を頂けて感謝です」
カオリさんのセカンド・パートナー探しは、1990年代後半から始まった。その軌跡は、まるでネット上でのコミュニケーション・ツールの流行をそのままなぞっているようだ。
「10年前は、まだ『チャH』とかもしていましたよ。当時、私もまだ30代でしたし。でも、あくまでもチャット上の話です。体の関係はないので不倫ではありませんよね? チャットが廃れて、SNSになると、かえって出会いが狭くなってきた気がします。SNSだと経歴や実名を明かします。だからリアル社会とどこか変わらないところがある。男性の身元が“ある程度”ですがわかるからでしょうね。とはいえ、女性の立場としては身元があるので安心です」(カオリさん)
数居るパートナー男性とは、チャHを含む性的なやりとりをネット上ではしても実際に肉体関係を持つことなく、デートは食事や映画などのプラトニックなそれに限っているという。そこがパートナー男性との間に設けている“不倫”との線引きだ。
カオリさんもまた他のセカンド・パートナーを持つ女性同様、夫や女友達にもその存在を明かしているという。それどころかセカンドからフィフスまで、数居るパートナー男性同士も引き合わせ皆が「LINE」で連絡を取り合うなど良好な関係を築いている。
「パートナー男性同士が仕事上での関係を持ったりしています。私の誕生日には4人のパートナー男性、皆でいっしょに食事会をしてくれました。私を取り巻くファンと思えば夫も安心です」(同)
ネットでのコミュニケーション・ツールの発展、それは既婚女性のセカンド・パートナーを持つ環境をも整えたといえる。IT社会の発展は、既婚女性の価値観をどう変えていくのだろうか。
(dot)
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