「うわー」「きゃー」「やばい」――。来園者の悲鳴をよそに2千匹のゴキブリがうごめいていた。全体を覆う展示ケースはなく、顔を近づけるとカサカサとはい回る音が聞こえる。静岡県河津町にある爬虫類(はちゅうるい)専門の動物園「iZoo(イズー)」にある「ゴキブリの塔」。高さ80センチの塔の足もとに10月下旬、360度動画撮影用の小型ビデオカメラを埋めた。
この2千匹はトルキスタンゴキブリと呼ばれ、主に中東地域に生息する。体長は2~3センチ。覆いのない、幅90センチ、奥行き45センチのスペースで展示されている。主なえさは野菜くずや果物。日本の台所でよく見られるクロゴキブリと違って、雑菌が少ないという。
同園は、イグアナやヘビ、カメなど約300種類1500匹がいる爬虫類に特化した動物園。ここにトルキスタンゴキブリが展示されている理由は、爬虫類のえさとなるからだ。バックヤードでは数千匹が常備されている。12年12月の開園から約1年後、飼育箱に密集するゴキブリを見て展示を思いついたという。
この塔は、ゴキブリが大好きなじめじめした環境が作りやすいコルク製だ。一定の展示スペースでより多くのゴキブリを展示するためでもある。
塔のそばには「『ふぅー』と息を吹きかけてください」との看板。横浜市鶴見区から来た小貫諒凱(りょうが)くん(5)が勢いよく息を吹きかけると数匹が逃げ出した。母親の亜希子さん(40)は「ワサワサして光っている感じがなんともいえない」と複雑な表情。最初は「気持ち悪い」と近づこうとしなかった諒凱くんは、最後には顔がゴキブリにあたるぐらい近づいて息を吹きかけていた。
なぜ展示ケースを設置しないのか。
森悠・爬虫類部門主任は「ここはえさや湿気がありゴキブリにとって快適な場所。逃げ出すことはほとんどない」と話す。オスは塔から滑空する可能性があるが、メスは羽がないため飛ぶことができないという。白輪剛史・園長は「ケースで遮断すると恐怖や気持ち悪さが半減する。飛んでくるかもしれない、臭いなどの感覚を大事にしたい」としている。(山本晋)
(朝日新聞デジタル)
ゴキブリ2,000匹は圧巻だろう。勇気が必要だけど。
0 件のコメント:
コメントを投稿