日露首脳会談の最大の焦点は「北方領土問題」。北海道の北東部に位置し、択捉島、国後島、色丹島、歯舞群島の4つの島からなる北方領土。これまで日本は「固有の領土」として返還を求めてきた。
一方、プーチン大統領が交渉の基礎としているのは「歯舞群島と色丹島の2島を日本に引き渡す」とした60年前の「日ソ共同宣言」。しかし、「引き渡しの条件や主権については書かれていない」として、仮に2島を日本に引き渡したとしても日本の領土にはならない可能性に度々言及していた。
■首相が打ち出した「新しいアプローチ」
交わらない両国の主張。その状況を打開するために安倍首相が打ち出したのが「新しいアプローチ」だった。経済協力を中心に協議し、領土問題を同時並行で進めながら、平和条約締結を目指すやり方とみられる。
その目玉として、日本とロシアが共同で北方領土の開発や経済振興などを行う「共同経済活動」などが検討されてきた。
日露首脳会談が行われた後の共同会見で、安倍首相は「新たなアプローチに基づき、今回、4島において共同経済活動を行うための特別な制度について、交渉を開始することで合意しました。これは平和条約の締結に向けた重要な一歩であります」と述べた。
北方領土での共同経済活動を、日露両国がそれぞれの主権を侵害しない形で行っていくことを明らかにした安倍首相。その上で「平和条約の締結に向けた重要な一歩だ」と強調した。
プーチン大統領も「今回、安倍首相は南クリル諸島(北方領土)で共同経済活動を提案してくださいました。私はこれを支持し、共同経済活動が平和条約締結に向かうことだと信じています」と述べた。
また、共同経済活動を日本とロシア、どちらの法律の下で行うのかについて、安倍首相は「どちらの立場も害さない」とした上で、今後、その方法について協議を始めていくことで合意したという。
■ロシア側の懸念
一方、プーチン大統領は領土問題交渉におけるロシア側の懸念も表明した。
「ウラジオストクとその北部に基地があります。そこから私たちは太平洋地域に出港するわけです。日米安保条約で日本とアメリカがどのように対処するのか、私たちには分かりません。日本の仲間のみなさんには、ロシア側が感じている不安を理解してほしい」
北方領土がロシアの安全保障にとって重要な位置付けであることに理解を求めたプーチン大統領。日米同盟の下に、北方領土がアメリカ軍の影響下に置かれることを警戒しているものとみられる。
■元島民の受け止めは?
この共同会見を、北方領土の元島民はどのように受け止めたのか。国後島出身の原カツさん(90)は、静かにテレビを見守っていた。
「ちっとも進歩がないんじゃないかなと思いますよ。日本にとってはいいことは、1つもないでしょう」
22歳の時に国後島から引きあげた原さん。なかなか進まない領土交渉に複雑な思いを隠せない。
「1回や2回の会合では大変ですけど、何回もこういう会談をするたびに、少しずつは良くなっていくでしょうね」
プーチン大統領への手紙を安倍首相に託していた元島民たちは…
千島歯舞諸島居住者連盟・脇紀美夫理事長「安倍首相が元島民の思いを胸に抱いて交渉にあたってくれたと。そのことについては評価したい」
一方で、領土問題の具体的なスケジュールが示されなかったことについては「さらに粘り強く交渉を重ねることにより、1日も早く4島の返還を実現することを期待している」と語った。
■色丹島の様子は…
一方、現在、約3000人のロシア人が生活している北方領土の色丹島でも、ロシアのニュース番組が共同会見の様子を放送していた。
「東京ではプーチン大統領と安倍首相の交渉が終了しました。投資分野での新たな合意について話し合われました」
最初に北方領土問題ではなく、経済協力の合意内容について、伝えていた。
ニュースを見ていた島民は…
「(共同経済活動で)色丹島は変わってよくなるんじゃないでしょうか」「でも絶対に島は渡さない。共同で、ロシアの条件で」
「平和条約のない異常な状態に私たちの手で終止符を打つことを確認した」と強調した安倍首相。今回、大きな進展がみられなかった北方領土問題。これからも難しい交渉が続く。
(日本テレビニュース)
今後の協議を見守るしかないだろう。
領土問題が進展しないのに、経済協力だけでは誰も納得しないだろう。
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