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2016年12月29日木曜日

注目日本人対決。井上尚弥のV4戦で番狂わせは起きるのか

 ボクシングのダブル世界戦(30日・有明コロシアム)の調印式並びに記者会見が28日、都内のホテルで行われ、WBO世界スーパーフライ級王者、井上尚弥(23、大橋)に挑む前WBA同級王者の河野公平(36、ワタナベ)は、「コンディションは一番いい。過去最高の試合をして番狂わせを起こします」と最強王者を相手に番狂わせを起こすことを宣言した。

 一方、4度目の防衛戦で、初の日本人対決を迎えることになった井上も、「最近では一番いい仕上がり。5月、9月と、いまいちの試合が続いている。今回は自分らしく、来年につながるように内容にこだわって、試合を進めたい」と、自信に満ち溢れたコメントを残した。
 
 河野は、8月に暫定王者のルイス・コンセプシオン(パナマ)に0-3の判定で敗れ4度目の防衛に失敗したが、前半に受けに回った陣営の完全な作戦ミスで、井上も、「あの試合は作戦に影響するところが多かった」と自戒するほどの試合内容で、実力で大きく劣ったような敗戦ではなかった。

 過去に河野は、2012年12月のWBA世界スーパーフライ級王者、テーパリット・ゴーキャットジム(タイ)との試合で、前半の劣勢を4回に怒涛の反撃から3度のダウンを奪って逆転勝利。プロ12年目、3度目の挑戦にしてベルトを巻く番狂わせを起こし、昨年10月には因縁の亀田興毅と米国シカゴで指名試合を行い、激闘の末、2度ダウンを奪ってタイトルを防衛するなど、渡辺会長曰く「ここ一番で力を発揮する」という崖っぷちの勝負強さを見せつけることになった。

 プロ16年、世界戦はこれが10試合目。井上とは、圧倒的に違うキャリアを生かして「色々と作戦を練っている」という。
「パンチ力もアップしている。自宅で秘密の練習をしたことで強くなった。当たれば面白くなる。亀田との試合よりも、いい意味で開き直っているし、勝つことしかイメージしていない。楽しんだもん勝ち」。
 井上よりも、一回り以上年上のボクサーは、そう言った。どこか不気味さを漂わせる。

 では河野に無敗の井上に土をつける番狂わせを起こす可能性はあるのか? 
 
 海外の格闘専門サイトなども、この試合に注目、プレビューを掲載しているが、「ヒットハードニュース」のベン・ブラックウエル記者は、「井上のスピードと河野の荒々しい経験の激突でエキサイティングな試合になるのは間違いないが、井上が防衛しているだろう」と、井上のV4が揺るがないと予想している。

 井上に隙があるとすれば、前回の防衛戦前に痛めていた腰痛の影響から、「7割程度」と本人が言っているほどのコンディション不安と、試合中にガラスの拳を痛める部分だけだろう。

 実父であるトレーナーの真吾さんに聞くと、「腰痛の影響で確かにスタートが遅れたので、全体として7割程度になっただけ。動けるようになってからは、中身の濃いラウンドをこなしているの不安はない」という。

 しかも河野は、ボディに弱点があり、亀田戦ではレフェリーにしっかりとローブローの反則を取ってもらったため助かったが、腹に効かされたパンチも少なくなかった。井上側からすれば、ボディへのパンチには、拳へのダメージがないため、怪我のリスクがなく、思い切って打てるという利点もある。

 この試合では、井上のボディ攻撃がキーポイントになることは間違いなく、その点を真吾トレーナーに尋ねると、「上下の打ち分けは河野戦に限らずきっちりとやらならない。特に今回は、強さと上手さというのをうまく使い分けて攻めたいと考えている」と、否定しなかった。

 元WBA世界スーパーフライ級王者で解説者の飯田覚士氏も井上有利の予想。
「番狂わせの可能性は高い」とは、口にしなかった。

「河野は当たって砕けろの精神で強気で来ると思います。これまで番狂わせといわれる試合は、ひるまない打ち合いで手にしましたからね。井上に隙があるとすれば、日本人相手にいいところを見せたいという色気。そこに河野がつけこむしかないでしょう。ただ、打ち合いになると、井上は今までの相手とは違います。冷静に、下が空くとしっかりとボディを狙ってくる可能性が高い。そうなると、河野が腰を折って苦しむKOシーンが浮かんでしまいます。ただ、リスクを負って河野は前に出るでしょうから、間違いなく気持ちのぶつかり合いになりますね」

 井上には、来年“パウンドフォーパウンド”のWBC世界スーパーフライ級王者、ローマン・ゴンザレス(ニカラグア)とのスーパーファイトが待ち受けている。海外メディアは、“ロマゴン”だけでなく、井上の対戦候補として、ロマゴンとの再戦が来年3月に予定されている(ロマゴンが高額ファイトマネーを要求して合意には至っていない)カルロス・クアドラス(メキシコ)、10日にコンセプシオンから判定でWBA世界Sフライ級のタイトルを奪った無敗のカリド・ヤファイ(英国)らの名前を挙げている。井上が、先ばかりを見ていると足元を救われる危険性があるのがボクシングの怖さだが、河野との日本人対決には、“番狂わせ”という最悪のパターンが、どうも想像しづらいのである。
(文責・本郷陽一/論スポ、スポーツタイムズ通信社)

 ガラスの拳で番狂わせもあるだろう。

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