どんな時も前向きな大田らしい受け止め方だった。日本ハムへの突然のトレード通告にも、すぐに気持ちを切り替え、新天地で花を咲かせることを誓った。
「1軍でいい結果を出せなかったのは悔しいですが、8年間やってきたことを自信にして、北海道で活躍する姿を見てもらえるように頑張ってきます」
慣れ親しんだ巨人のユニホームに別れを告げる。寂しさはあるが、最初に湧いてきた感情は、支えてくれた人へのお礼だった。
「たくさんの方が自分をサポートしてくれた。いろいろな指導者の方にも出会うこともできた。全てが自分の財産です。これまで自分に携わっていただいた全ての方に感謝したいです」
中でも特に恩を感じているのが、原辰徳前監督だ。中学時代、地元広島の野球教室で教えを受け、打撃を絶賛された。この運命的な出会いをきっかけに憧れを抱き、原さんの母校・東海大相模高の門をたたいた。高校通算65本塁打を放ち、08年ドラフト1位でソフトバンクと巨人が競合。くじを引き当てたのが原さんだった。
「原監督には本当に感謝の思いしかありません。原監督がいたから巨人に入ることができたし、いろいろ経験させてもらった。一緒に野球をやる、という小さい頃の夢がかない、1年目から1軍の試合にも出してもらい、勝負に対する厳しさを教えてもらいました」
松井秀喜さんの背番号「55」を継承して注目を浴びた。重圧と闘いながら、入団5年で2本塁打とプロの壁にぶつかった。14年から「44」に変更も通算9本塁打。今季は62試合、119打席で打率2割2厘、4本塁打に終わった。
「ジャイアンツにはプロ野球の厳しさを思い知らされました。並大抵の練習量ではレギュラーの人にかなわないし、内容の濃い練習をする体力、しっかりとした考え方がないとやっていけない。伝統あるレベルの高いチームで野球をやらせてもらい、常に安定したパフォーマンスを発揮する難しさも感じました。つらい思い出も楽しい思い出もありますが、全てを今後の糧にしたいです」
広い札幌Dを本拠地とする日本ハムでは「走、攻、守」の三拍子に大きな期待がかかる。同じ右打者で尊敬する先輩、中田の存在も心強い。今は、北海道で暴れ回ることしか頭にない。
「自分が結果を出してレギュラーになっていれば、このトレードはなかったかもしれない。それは分からないですが、もう一度チャンスを頂いたとプラスに捉えて、強い気持ちで挑みたい。巨人で学んだことを胸に、全力を尽くす決意です」
活躍が、最大の恩返しになる。(片岡 優帆)
◆大田 泰示(おおた・たいし)1990年6月9日、広島県生まれ。26歳。東海大相模高で通算65本塁打し、08年ドラフトで巨人、ソフトバンクが1位競合。原辰徳監督(当時)がくじを引き当てた。11年5月18日の楽天戦でプロ初安打、初打点。12年9月23日のヤクルト戦でプロ初本塁打。188センチ、95キロ。右投右打。今季年俸2100万円。
(スポーツ報知)
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