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2015年5月31日日曜日

<FIFA汚職>「手錠か捜査協力か」米当局4年前から内偵

 【ニューヨーク草野和彦】「手錠をかけられるか、それとも捜査に協力するか」--。国際サッカー連盟(FIFA)の副会長らが賄賂を受け取ったなどとして米司法当局に起訴された事件の捜査では、米国サッカー界を率いてきたFIFAの元大物幹部が、捜査員らの揺さぶりに屈し、協力に転じたことが大きな役割を果たした。米紙ニューヨーク・デーリーニューズが伝えた。これによると、米捜査当局は元幹部からの情報などを基に少なくとも4年前から捜査に着手、疑惑が取りざたされながらもメスが入ることがなかったFIFAの「外堀」を埋めていった。

 同紙によると、2011年に米連邦捜査局(FBI)と税務当局の担当者2人が、FIFA元理事で北中米カリブ海サッカー連盟事務局長も務めたチャック・ブレイザー氏(70)を訪ね、同氏が10年以上も脱税していると指摘。脱税での検挙かFIFA事件での情報提供かの二者択一を迫った。同氏が捜査への協力を選ぶのに1時間もかからなかったという。

 ブレイザー氏は北中米カリブ海サッカー連盟の財務担当として頭角を現し、関係業者に契約額の1割を見返りとして要求することから、「ミスター10%」とも呼ばれた。連盟は月額2万4000ドル(約300万円)の家賃を支払い、米フロリダ州のリゾート地マイアミなどに別荘も与えていた。「使途の説明無しに数十万ドルのカネを動かせた」とも言われる。

 捜査協力に同意したブレイザー氏は、12年のオリンピック・ロンドン大会の際に、小型マイクが仕込まれたキーホルダーで同僚のFIFA幹部らとの会話を録音。捜査当局はブレイザー氏の立ち会いの下、電話やメールなどもチェックした。捜査当局はこうした情報を基に、ワールドカップ(W杯)ロシア大会(18年)やカタール大会(22年)の誘致を巡る交渉についても、賄賂のやりとりなどの証拠を集めていった。

 W杯誘致を巡る不正疑惑では、英紙サンデー・タイムズ記者が10年、米国へのW杯誘致を目指す米企業のロビイストを装い、ナイジェリア人のFIFA理事会メンバーに接触。米国への投票と引き換えに多額の賄賂の支払いなどが要求される様子をビデオカメラで撮影し、暴露した。

 FIFAの「隠蔽(いんぺい)体質」を問う声は以前から指摘されてきた。FIFA倫理委員会の責任者として、18年と22年のW杯開催地選考を巡る疑惑調査を率いた元米検事、マイケル・ガルシア弁護士は昨年末に辞任を発表。FIFA側が調査報告書の全面公開を拒んだことが理由だったとされる。この「ガルシア・リポート」は事件を受けて米上院議員が全面公開を求めるなど再び注目が高まっている。
(毎日新聞)

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