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2015年5月27日水曜日

悩ましい円安、内需株に国内消費圧迫懸念


 [東京 27日 ロイター] - 7年10カ月ぶりのドル高/円安水準を日本株は歓迎できないでいる。輸出株は素直に円安を好感しているものの、今年の上昇相場をけん引してきた内需株が弱い。輸入物価上昇で国内消費が圧迫されれば、海外勢は内需主導の景気回復というシナリオ変更を迫られる可能性がある。日銀追加緩和への期待も後退しかねず、悩ましい円安となっている。

 <業種別で明暗>

 業種別で明暗がはっきり分かれた。27日前場の東京株式市場では、輸送用機器<.ITEQP.T>や電気機器<.IELEC.T>は円安を好感して上昇したが、医薬品<.IPHAM.T>や食品<.IFOOD.T>、小売業<.IRETL.T>など内需株は下落。いずれも小幅な動きだが、2007年7月以来の円安水準(対ドル)を映した展開となっている。

 ただ、33業種全体で見れば、値上がりは10セクターにとどまり、日経平均<.N225>は9日ぶりに反落。「騰落レシオなどテクニカル的な過熱感は強くないため、売りは少ない。ただ、買いの勢いも鈍い。以前のような円安を素直に好感する動きではなくなっている」(大手証券トレーダー)という。

 円安には功罪がある。輸出企業にとってはプラス要因だが、輸入物価が上昇すれば、内需にはダメージだ。貿易赤字が定着し、賃金も期待ほど上がらない日本にとっては、1ドル120円を超える円安が、果たしてトータルでプラス要因かどうかには議論がある。2013年のアベノミクス相場全盛時のように、円安が素直に日本株買いの材料とされる展開ではない。

 「海外投資家は今年、日本の内需が回復するとのシナリオで、日本株を買っていた。円安が進み過ぎて国内消費が圧迫されれば、シナリオ変更を余儀なくされるかもしれない」とBNPパリバ証券・日本株チーフストラテジスト、丸山俊氏は話す。観光地が外国人観光客でごった返す中、一段の円安でインバウンド消費がさらに盛り上がるかは微妙だ。

 円安進行が止まらなければ、日銀は円安を加速させかねない追加金融緩和に及び腰になるとの思惑も浮上しやすい。輸入物価が上昇し、物価が2%に近づけば、追加緩和を実施する必要性も後退する。海外勢が好む日銀追加緩和の材料も使いにくくなってこよう。

 <ドル建て株価下落と米国・欧州投資家>

 円安は海外投資家にとっても悩ましい。円安が進めば、ドル建て日経平均を圧迫するためだ。ドル建て日経平均は、円建て日経平均自体の上昇で下値切り上げの展開を続けているが、足元は急激な円安で165ドル台に続落。4月末に付けたピークの169ドル前半とのかい離幅が開いている。

 しかし、円安は輸出企業の業績上積み期待を高める。このため「米国の投資家は、円安による目減り分をカバーするために、輸出株を中心とした日本株買いと同時に円売りヘッジを行う可能性がある」とJPモルガン・アセット・マネジメントのグローバル・マーケット・ストラテジスト、重見吉徳氏は指摘する。

 ただ、対ユーロでは円安が進んでいるわけではない。ユーロ/円は5月18日に136.96円を付けた後は軟化し、足元では133円後半で推移している。最近、日本株市場で存在感が増している欧州投資家が、円売りヘッジに動くインセンティブは米国投資家ほどは大きくない。

 4月の地域別売買動向(東証発表)では、欧州勢の日本株買い越し額は7584億円と1年4カ月ぶりの高水準に達し、北米勢の4825億円で大きく上回った。

 <ドル高はドル高材料にネガティブ>

 円安の反対側で進むドル高も、投資家にとっては判断の難しい材料だ。ドル高の背景は米景気改善と早期利上げ観測だが、ドル高が米国の輸出企業やエネルギー関連企業の業績を圧迫すれば、景気は回復しにくくなり、米利上げも簡単には行いにくくなる。

 前日発表された耐久財受注や、新築住宅販売件数など4月の米国経済指標は悪くなかったが、4─6月期以降の景気回復シナリオの確度が明確に上がったわけではない。前週末に発表された4月中古住宅販売や5月製造業購買担当者景気指数(PMI)、5月米フィラデルフィア連銀業況指数などは軒並み市場予想を下回った。

 米景気が改善すれば、円安と輸出増加のダブルメリットを受けられる日本の輸出産業だが、今回節目を突破した対ドルでの円安の動きはあくまで思惑先行のドル高という面が大きい。

 実際、26日の米市場では、ダウ<.DJI>が190ドル安となり、長期債の利回りは軒並み低下した。日米金利差拡大によるドル高/円安という見方には疑問もある。円安がこのまま進むのかは米経済次第ということになりそうだ。

 (伊賀大記 編集:田巻一彦)

(朝日新聞デジタル)

 円安が進むかは懐疑的な見方があるも、長引くと物価上昇で、景気回復が鈍る。

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