中国が主導するアジアインフラ投資銀行(AIIB)の体制の大枠が固まった。中国は出資比率を3割弱に抑えて参加国に配慮する一方、最大の出資を確保することで重要議案について実質的な拒否権を持つなど、中国の思惑がほぼ反映された格好だ。AIIBは今後、設立準備作業を加速させるが、参加を見送っている日本は、情報収集を続けて参加の是非を慎重に判断する。
22日までの首席交渉官会合で、最大の論点となったのは各国の出資比率。国内総生産(GDP)を基準に決めると、中国の出資比率が4割近くに突出することから、中国に対抗心を持つインドなどが別の基準も織り込んで算出するよう要求。中国は出資比率を3割弱に下げ、インドの出資比率が10%台になるよう妥協した模様だ。中国が突出することへの批判をかわしつつ、重要議案の可決には高い比率の賛成が必要になるようにして、拒否権は確保したとみられる。
一方、運営を監督する理事を本部を置く北京に常駐させない方針は変えなかった。中国側は「組織運営の効率化が目的」と説明。日本や米国などは、理事が本部に常駐する世界銀行やアジア開発銀行(ADB)などと同等の監督水準が確保できるか不安視しているが、既存の国際金融機関に不満を持つ途上国などの支持を背景に押し切った。インフラ建設資金の不足に悩む東南アジア諸国は、AIIBの融資に期待。ウクライナ危機を巡り欧米と対立するロシアは、中国との関係強化で経済制裁を乗り切りたい意向だ。英国などは、中国の通貨・人民元の取引拡大を狙っており、「協定に不満があっても関係維持を優先した」(国際金融関係者)とみられる。
中国はAIIBの準備事務局に世銀など国際金融機関のOBをスカウト。関係者によると協定作りは世銀の法務部門に勤務した専門家が主導している。「国際的に見劣りしない組織づくりについて各国に理解を求めている」(在北京の外交筋)が、融資基準などでは不明確な部分も残る。欧米から経済制裁を受けるロシアが主要出資国の一つになる見込みで、AIIBがロシアに融資すれば「制裁の抜け穴になる」(国際金融関係者)可能性がある。人権侵害などが指摘される国々への融資を防ぐことができるのか、懸念は拭えていない。
日本は、中国側にADBなどと同水準の環境配慮や常設理事会の設置を求めてきたが、まだ回答がないという。このため、設立協定が結ばれる6月下旬の段階ではAIIBへの参加の是非を判断せず、組織運営や融資基準などが日本の求める水準になるか引き続き見極める方針だ。菅義偉官房長官は22日の記者会見で、設立協定の内容について「まだ問題があると思っている」と述べた。
安倍晋三首相は21日、アジア向けインフラ投資に5年で1100億ドルを投じる方針を表明。日本が最大出資するADBと連携し、存在感を示す方針だ。政府内には、AIIBについて運営体制などの細かい調整が年末ごろまで続くとの見方が多く、「判断を急ぐ必要はない」との声が出ている。【和田憲二、北京・井出晋平】
(毎日新聞)
拒否権や常駐理事を置かないなど、不透明で、やはり中国主導だと胡散臭い。
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