MotoGP第3戦のアルゼンチンGPは、M・マルケスとV・ロッシの白熱した優勝争いとなった。というよりも、「白熱した戦いになろうとしていた」というのが正しいかも知れない。
まさにこれからというときに、接触事故が起きてマルケスがリタイヤとなってしまったのだ。
接触は、トップを走るマルケスにロッシが追いついたラスト2周に起こった。
バトルの口火を切ったのはロッシ。自ら仕掛けてマルケスを抜くも、すかさずマルケスが抜き返す。再び前に出たロッシにマルケスが並びかけた時、2台のバイクが接触した。
2人はややバランスを崩しながらも次のコーナーに向けて体勢を建て直しかけていたのだが、その直後に2人は再び接触。2度めの接触でマルケスは転倒してしまった。
この接触シーンは審査委員会の審議の対象となったが、レーシングアクシデントとして不問となる。そしてライバルのいなくなったロッシは、ラスト1周半を悠々と走って今季2勝目を達成した。
レース後の会見で、「2度の接触はマルケスのミス。彼はいつもイチかバチかの賭けにでるからね」と、熾烈なバトルの中でマルケスのミスで起きた接触事故だったことを強調した。
ペナルティ対象ではない、しかし意地の悪い走りだった。
しかし、いろんな角度からの映像を見ると、ロッシの巧妙な作戦とテクニックに、マルケスがまんまとやられてしまったのではないかというのが僕の印象だ。
空撮映像と正面からの映像を見ると、ますますその確信が深まる。つまり、接触は2回ともロッシがマルケスをブロックしたために起きたのである。
こうした優勝争いで、抜かれないためにブロックラインを取るのは珍しいことではない。だから、ロッシのライディングがペナルティの対象にならないとした審査委員会の判断は良し、としよう。
だがどちらのケースも、ロッシならではの高度なテクニックがなさせた意地の悪い走りだったように思う。
マルケスにも油断はあったのだろう。
ロッシのこうした動きをまったく予想せず、警戒もしていなかったことで、ロッシのリヤタイヤにフロントタイヤを接触させて転倒した。
「バレンティーノは僕のヒーローだっていつも言ってきた」
今季、ウインターテストから好調なロッシは、「チャンピオンになるためにはマルクの前でゴールしなくてはいけない」とマルケスをターゲットにした発言を続けて来た。
対してマルケスは、「ロッシとのバトルは楽しい。ものすごく盛り上がるからね」といいう発言を何度もしている。
そして、これがロッシとバトルする今季初のチャンス到来となったのだが、なにがなんでも勝ちたいロッシと、そのロッシとバトルして勝ちたいというマルケスとの気持ちの温度差が、こういう結果を招いたのではないだろうか。
マルケスは今回の接触事故でロッシのことを尋ねられると、転倒直後の悔しい表情はどこへやら、さばさばした表情で、「バレンティーノは、僕のヒーローだっていつも言ってきた。そして僕は彼からたくさんのことを学んできた」とコメント。
今回の接触が、ロッシのせいだとも自分のミスだとも言わなかった。それだけに、この言葉にはマルケスの気持ちが凝縮されているような気がするのだ。
つまり、最後まで正々堂々の戦いになると思っていたマルケスにとっては、あり得ない結末だった。それが勝つための戦略や抜かれないためのテクニックだったとしても、「まさか、バレンティーノがあそこであんな走りをしてくるとは……」と、フェイントを食ったような気分になったのではないだろうか。
ロッシが過去に繰り返してきた、確執と接触。
振り返れば、これまでロッシは、チャンピオン争いをしたライダーたちと必ずと言っていいほどこうした接触事故を起こしている。
その結果として対決の構図が生まれ、ファンを巻き込みながら、さまざまな形でライバルにプレッシャーを掛けていく。M・ビアッジ、S・ジベルナウ、C・ストーナー、J・ロレンソといった多くの選手との確執を知らないファンはいない。
その昔からロッシは、不仲になるとライバルたちの呼び方を変える。
セテがジベルナウになり、ケーシーがストーナーになるように、ファーストネームで呼ばなくなる。いまはホルヘに戻ったが、不仲時代はロレンソと呼んでいた。
今回のレース後の会見でも、あれだけロッシを慕っているマルケスのことを、これまでのようにマルクと言わず、何度もマルケスと言っていたのが気がかりだった。もしかすると、また、そういう状況にするつもりなのだろうかと思った。
2人の関係性は、これから確実に変わる。
第3戦アルゼンチンGPを終えて、総合首位をキープしたロッシと、総合3位から5位にダウンしたマルケスとのポイント差は30点に開いた。
ロッシにとっては大量リードと言ってもいいポイント差を築いたことになるが、果たして今回の接触事故が、ロッシにとってプラスになるのか、それともマイナスになるのかが、実に興味深いところでもある。
少なくともコース上では、マルケスがロッシとの戦い方を変えてくることは間違いないし、不必要なバトルはしなくなる。そして、これまで以上に全力で勝ちに行くことになると思うからだ。
それにしても、転倒に終わったマルケスは自身のヒーローであるロッシとのバトルで、何を学んだのだろうか。
それを知るのはこれからになるが、ひとつだけ言えるのは、こういう悔しいレースをした後のマルケスは、確実に強くなって来た事実があるということ。
8回目のタイトル獲得に本気を出してきたロッシと、3年連続チャンピオンを狙うマルケスの戦いは、まさにゴングが鳴ったばかり。
この数年、グランプリを盛り上げてきた2人の戦いは、新しい局面を迎えようとしているようだ。
(Number Web)
この文章を書いた人は、ロッシに悪意を持っているようだ。
単なるマルケスファンなのでしょう。
アルゼンチンGPをきちんと観たら、ロッシの素晴らしさが理解できるのに残念。マルケス転倒の前に、ロッシが周回ラップタイムを詰めてきたのが全てであり、転倒しなくても、ロッシを追いかけることは不可能だった。
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