「信頼の置ける秘書らのおかげで、政治活動に専念できた」とのコメントには耳を疑った。政治資金規正法違反(虚偽記載)罪で元秘書2人が起訴された小渕優子前経済産業相のことである。
自分は悪事に手を染めていないが、違法行為は信用できる秘書たちがしっかりやってくれた。そう言っているように聞こえる。
政治的・道義的責任の重さは言うまでもない。小渕氏は昨年10月に閣僚を辞任した後、今も説明責任を果たしていない。政治家として資金を適切に管理できないことを露呈するものだ。これで議員を続ける資格はあるのか。
在宅起訴されたのは、ともに小渕氏の元秘書、折田謙一郎・前群馬県中之条町長と加辺守喜・前会計責任者だ。小渕氏自身も東京地検特捜部から任意の事情聴取を受けたが、嫌疑不十分で不起訴とされた。
起訴状によれば、「小渕優子後援会」など関連4団体の平成21~25年分の収支報告書について架空の寄付金を団体間で計上し、観劇会の収支を改竄(かいざん)したとされる。
選挙費用などにあてる帳簿外の支出が存在し、記載額の操作はこれを穴埋めする目的だったのではないか。そう疑われても仕方あるまい。収支報告書へのでたらめな記載は3億2千万円分に上る。
小渕氏は「政治的・道義的責任を痛感している」ともコメントした。それなら、選択すべき行動もおのずと分かりそうなものだ。
昨年暮れの衆院選で、小渕氏の求めに応じて公認を与えた自民党の責任も重い。
政治資金の透明性や政治活動の公正さを確保しようという規範意識が、小渕氏に限らず、政治の中で失われていないか。
小渕氏には、地元の有権者にワインを配っていたとの疑いも指摘されていた。具体的に帳簿をどう操作したかだけが問題なのではない。捻出した資金はどう使ったのか。その支出先について小渕氏は調査の先頭に立つべきだ。第三者機関で調査するとした約束を、国民は忘れていまい。
規正法上の虚偽記載は、5年以下の禁錮または100万円以下の罰金がある重い犯罪だが、連座制がなく、政治家本人は罪を問われにくい。会計責任者に対する政治家の監督責任の強化など、必要な法改正の指摘も放置されたままだ。政治に真剣味が足りない。
(産経ニュース)
政治資金規制法の目的は立派だけど、機能していない。
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