日本が先行していたはずの高速鉄道受注で、中国に敗退したことで、政府内には落胆が広がった。日本が2011年から事業調査を進めていたのに対し、中国が計画を発表したのは今年3月。日本は工期4年、試運転2年を提示したが、中国は3年間の工期を示しただけだった。国土交通省のある幹部は「中国方式が実現可能性が低いとたかをくくり、インドネシア政府からの情報収集が不足した面はある」と反省を口にした。
中国は、インドネシアが求めた同国の財政負担をゼロにするという「破格の条件」(政府関係者)をのむことで受注にこぎつけた。ある鉄道業界関係者は「財政負担は政府にも民間企業にも限界があり、負けるのは仕方ない面もある」と語り、中国の猛烈な受注戦略に驚いてみせた。経済界では「新興国でのビジネス戦略をさらにしたたかに練る必要がある」(経団連関係者)などの声が上がった。
日本政府は成長戦略の一環として、「インフラシステム輸出戦略」を掲げ、鉄道やエネルギーなどのインフラの輸出強化を目指している。新興国を中心に伸びているインフラ需要を取り込み、13年の受注実績16兆円を20年にはほぼ倍の約30兆円まで増やす計画だが、その実現に中国が立ちはだかる形となった。
鉄道インフラに携わる業界関係者は「中国企業は価格競争力があり、今後、強力なライバルになり得る。しかし、日本の鉄道メーカーは海外での受注実績が豊富で、故障が少なく、安全性が高く、工期を守るなどの強みがある」と語る。
日本の高速鉄道は、インドで両政府共同の事業調査を終えて正式合意を待つ段階。タイでも導入を前提とした調査が始まった。新幹線方式は、東日本大震災でも安全に停止するなど、技術水準は世界的に評価されている。しかし、価格面の競争力では見劣りがする場合がある。日本総研の岡田孝・主席研究員は「品質、安全性の高さと相手の要望に応じるバランスをもう一度考え直す必要がある」と指摘する。【山口知】
(毎日新聞)
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