被害者参加制度を利用して裁判を傍聴した佐藤さんの父は、法廷で初めて加害者の父と対面した。佐藤さんが、被告によって愛娘を惨殺された怒りを押し殺すように「お父さんは、有期刑になると考えているのでしょうか」と問うと、証人として証言台に立った沼田被告の父は「無期懲役に値する刑だと思う」と答えた。これに対し、佐藤さんは納得できない様子で「娘を奪われた我々家族の気持ち対して『無期』ということを考えてらっしゃるんですね。お父さん自身も…」と声を震わせながらただすと、沼田被告の父は「人の人権を奪った人間に人権はない。死刑がふさわしい」と改めて回答した。
検察側の冒頭陳述によると、沼田被告は、昨年10月15日午後10時10分ごろ、アルバイト先から帰宅途中の佐藤さんを、自宅までわずか20メートルの細い路地で襲い殺害した。犯行に使用した凶器は、刃渡り約18センチのコンバットナイフ。逃げる佐藤さんを背中から刺し、約16メートル執拗に追いかけ、絶命するまで32か所刺した。左肋骨(ろっこつ)部分には最も深い13センチ刺し傷があった。翌日午前1時20分ごろ、狭山署に出頭し、殺人などの容疑で逮捕された。
検察側は沼田被告の父に「これまで、何度(殺害現場の)献花台に行きましたか」と問うと、「昨年12月くらいに1回行っただけです」と小さな声で答えた。そして「生活上、多額の借金があるため、まだ賠償は何もできていない」と加えた。
この日、沼田被告は、大学での失恋や留年が確定的になったことで「現実から逃げたい。これまでの自分の人生を台無しにして、リセットしたい。刑務所にいくしかない」などと極めて身勝手な犯行動機を述べた。「(身長169センチの)自分より体格の小さい人ならだれでもよかった」と事件2日前から殺害対象を物色していたことも明かした。近くのコンビニで働いていた佐藤さんのことは知っていたが、話したことはなかったという。
佐藤さんの父に「あおむけになって何度も『助けて』と苦しい表情で懇願する娘に向かって、何度もナイフで刺したんですね」と問われると、「はい」と冷ややかに回答。自身の刑期は「20年近くなるだろう」と述べた。
沼田被告は、高校時代に不登校になり通信学校に転校。大学でも授業についていけず、昨年9月から学校に行かずネットカフェに入り浸るようになった。そんな息子と、それまで話し合ってこなかったという被告の父は「なぜ刑務所にいきたいと思ったのか、今も分からない」。それでも、「(刑期を終え)社会復帰したら、何でも話し合える環境を作りたい」と更生を願っていた。
(スポーツ報知)
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