戦後の「民意」を見ると、残念ながら間違いの連続でした。「北朝鮮は地上の楽園」「共産主義国の持つ原爆は良い原爆」「文化大革命は民主主義の極致」などなど、今から思うとゾッとするような「民意」が「良識ある文化人」の口からあふれ、一部新聞紙上を埋め尽くしました。もし1960年、70年の安保反対闘争の熱気に浮かされて、日本が日米安保条約を破棄していたら、果たして現在の日本の平和と繁栄、そして自由は存在していたでしょうか? 私は極めて懐疑的です。
日本が共産化せず、旧ソ連の侵略を受けなかったのは、日本が世論調査で政治をする国ではなく、平均的国民よりは正しい判断ができる「選良」が物事を決める代議制民主主義だったからでしょう。今回の安保法案についても幸いにして代議制の利点が出たとみるべきです。
ただ、残念なことに、近年の与野党国会議員の言動を見ると、とても「選良」ばかりではないようですね。「選悪」というか、明らかに国民の平均値よりも「バカ」かもしれないと思う政治家が増えたように感じるのは、私が年を取ったせいでしょうか。
「民意」に押されて当時の社会党が延々5日間にわたって牛歩戦術をとって反対したPKO法について、今「民意」が廃止を求めているという話はどこからも聞こえてきません。その後「社会党」が実質的に消滅してしまったことを見ると、「民意」がこの手の抵抗戦術に好意的でないことが分かります。そしてもう一つ指摘しておきたいのが、過去の例を見ると、「民意」はおおむね「事後承認」的な動きをするということです。安保条約なんか、その典型ですよね。
安倍政権は、法案が通ったこれからが正念場です。政権が手にした法律を、いかに丁寧に国民の平和と安全のために使うのか。まさに「国民」は見ています。((株)大阪綜合研究所代表・辛坊 治郎)
(スポーツ報知)
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