非常に強い勢力で先島地方を襲った台風21号は与那国島などに大きな被害をもたらした。与那国町では全国歴代4位となる最大瞬間風速81・1メートルを記録した。
県内で80メートルを超える暴風が記録されるのは約半世紀ぶりだ。波照間島など八重山地方の広い範囲で50~60メートル級の猛烈な暴風が吹き荒れた。
ことしは、かなりの勢力で沖縄地方に接近する台風が相次ぐ。8月下旬に石垣市で最大瞬間風速71・0メートルを記録した台風15号の被害に見舞われたばかりだ。台風のたびに住民や各事業者は対策に追われており、負担も増している。
今回、沖縄気象台は「台風15号と同規模かそれ以上の重大な災害が発生する恐れがある」と呼び掛けていた。予測通り、台風は沖縄接近に伴って勢力を増し中心気圧は925ヘクトパスカルにまで発達した。ただ厳重な警戒を呼び掛けた気象庁の予測を上回って台風の勢力が発達した点は見過ごせない。
海面水温の上昇などが急激な発達の要因とされるが、80メートル超の暴風に衝撃を受けた人は多いのではないか。私たちは自然災害に対する警戒を常に怠ってはならないのだと、自覚させられる。
与那国島では電柱数十本が折れたり倒れたりし、学校の体育館など公共施設にも多くの被害が出ている。与那国町の報告によると一般住宅の被害も甚大で、全壊が10軒、半壊が27軒、一部損壊は約280軒に上っている。
第11管区海上保安本部によると、電気やガスなども使用できなくなっている地域がある。船舶などの被害も目立つ。29日夕段階で島では依然500戸が停電し、固定・携帯電話やインターネットもつながりにくい状況が続いている。
被害の全容はまだよく分かっていない。与那国空港は無線施設などが損壊し悪天候時は着陸できない状態だ。復旧作業の加速に向けて町は29日に県を通じて自衛隊に災害派遣について要請し、陸自ヘリは同日夕に電力や電話会社などの復旧作業員と資機材を現地に搬送した。
被害実態の把握を進めながら、ライフラインの復旧作業を急がねばならないことは言うまでもない。関係機関は一致協力し、作業に全力を挙げてほしい。
(琉球新報)
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