ページビューの合計

2015年12月3日木曜日

化血研 化学及血清療法研究所 40年以上、不正製造…非承認方法で血液製剤

 ◇厚労省、処分へ

 血液製剤やワクチンの国内有数のメーカーである一般財団法人「化学及血清療法研究所」(化血研、熊本市)が、国が承認していない方法で血液製剤を製造した問題で、化血研は2日、製造記録を偽造するなど隠蔽(いんぺい)工作をしながら、40年以上にわたり国の承認書と異なる不正製造を続けていたとの調査結果を明らかにした。厚生労働省は化血研を行政処分する方針。【古関俊樹】

 ◇「常軌を逸した隠蔽体質」

 化血研は、宮本誠二理事長が2日付で辞任したと発表した。他の全理事も同日付で辞任や降格などの処分とした。

 化血研が2日にあった厚労省の専門家委員会に第三者委の調査結果を報告した。報告書によると、化血研は遅くとも1974年には一部の製剤について加温工程を変更し、国の承認書と異なる方法で製造していた。90年ごろには幹部の指示によって、血液製剤を作る際に血液を固まりにくくする添加物を使用する不正製造を始めた。製造効率を上げるためだったという。ワクチンでは同様の不正行為は確認されなかった。

 医薬品メーカーは法令に基づき、国の承認書に従って製造し、記録を残す義務がある。国は定期的に記録を確認しているが、化血研は95年ごろから承認書通りに製造したと虚偽の記録を作り、検査をクリアしていた。記録用紙に紫外線を浴びせて変色させ、古い書類だと見せかける工作もしていた。

 こうした不正行為はトップである理事長も認識しており、第三者委は「常軌を逸した隠蔽体質が根付いていた」「研究者としてのおごりが不整合(不正)や隠蔽の原因となった」と指摘した。

 厚労省は今年5月に化血研を立ち入り調査し、血液製剤の製造で不正を確認。6月に血液製剤の出荷を差し止め、他のワクチンなどについても調査。化血研も9月に第三者委員会を設置し、調査を進めていた。これまでに健康被害は確認されていないという。

 化血研は旧熊本医科大が前身で、45年の設立。薬害エイズ訴訟の被告企業の一つ。

 ◇「風土として対応できず」…理事長謝罪

 化血研の宮本誠二理事長は2日夜、厚生労働省で記者会見し、「深くおわびします」と謝罪した。自身も長年にわたり不正を認識していたことを明らかにし、「化血研の風土として積極的に対応できなかった。私もその一人だ」と苦渋の表情で語った。「理事長に就任した時になぜ改善しなかったのか」と記者から問われると、宮本理事長は「改革すると血液製剤の供給がストップしてしまうことを懸念した」と明かした。

 会見に先立ち、薬害エイズ訴訟原告団の代表らが「和解した私たちに対する裏切りだ」とする抗議書を宮本理事長に手渡した。【内橋寿明】

 ◇接種予約、中止の動き

 厚生労働省は化血研に対し、血液製剤の出荷差し止めに続き、ワクチンの出荷自粛を要請している。化血研のシェアが高く代替品の確保が難しい日本脳炎とA型肝炎、B型肝炎のワクチンが不足し、東京や千葉など各地で接種の予約を中止する病院が出始めている。ワクチンを販売しているアステラス製薬によると、出荷が再開されなければ、日本脳炎は来年1月下旬、B型肝炎は来年1月中旬~下旬に市場の在庫がなくなる可能性がある(11月27日現在)という。

 厚労省によると、日本脳炎ワクチンは2013年度に延べ429万2409人が接種。A型肝炎、B型肝炎は任意接種のため接種人数の統計がないという。厚労省は「製剤ごとに優先順位を付けて調査しており、終了後に出荷自粛の要請を解除する」と説明するが、解除の時期は未定。

 化血研が未承認製法で血液製剤を出荷していたことで、厚労省は他の製剤についても製法の実態調査を化血研に指示した。化血研は報告したが、厚労省は報告に不備があるとして、9月までに29製品の出荷自粛を要請。安全性が確認できたり、緊急性が高かったりする製剤は出荷できるようになったが、現在もワクチン3種類、血液製剤7種類は出荷できない。【古関俊樹】
(毎日新聞)

 安全よりも、効率・利益優先の企業体質が恐ろしい。

0 件のコメント:

コメントを投稿