当初は「すぐにでも抗争か」と懸念されたが、今のところ、発砲などは確認されていない。だが水面下では、6代目山口組と神戸山口組のどちらが「山口組」なのか、正統性を巡る激しい攻防が展開されている。
関係者によると、6代目山口組は9月上旬、直系の安東美樹組長に2代目竹中組を継承させることを決めたという。竹中組は、4代目山口組の竹中正久組長の出身母体だ。1984年、4代目山口組に反旗を翻した一派が一和会を結成して「山一抗争」に発展。翌年1月、竹中組長は一和会の組員に射殺された。
「名門・竹中組の名跡を復活させることで、6代目山口組こそが本家本元の山口組だとアピールしたいのだろう」(兵庫県警関係者)
神戸山口組は今年8月末の結成の際、「御挨拶」と題した文書を全国の暴力団組織に送った。そこには山口組の「中興の祖」とされる田岡一雄3代目組長を「礎をつくられた偉大な親分」と記す一方、司忍(本名=篠田建市)6代目組長を「利己主義甚だしく歴代親分特に三代目親分の意を冒涜」と厳しく批判している。先人の組長をたたえ、われこそが正統性ある山口組だといわんばかりだ。
司組長もその意を察しているのか、9月1日の定例会で発表した言葉の冒頭で、先人の組長の墓地に「お参り」したことを明記。「五代目先代姐、宅見組先代姐をはじめ、関係者の皆さんには私の不徳と遺憾の意を伝えたことを皆に知らせておく」と書いている。
「わかりやすくいうと、6代目山口組と神戸山口組は、お互い、正統性を争い、そのためには、先人のお墨付きがほしいということです」(同)
司組長が渡辺芳則5代目組長(故人)の夫人を訪ねたらしいとのうわさが出ると、すぐさま神戸山口組の井上邦雄組長が夫人の信任を得たという話が流れる。激しい宣伝戦が展開されている。
お墨付きを巡る動きは、ほかの暴力団組織にも広がる。9月5日には関東の指定暴力団住吉会の幹部が神戸山口組を訪問。すると、15日に同じく関東の指定暴力団稲川会の幹部が総勢15人で6代目山口組を訪れた。
ある指定暴力団幹部は困惑した顔でこう話す。
「6代目山口組、神戸山口組、どちらからも『うちについてくれ』というオファーがあります。でも、山口組は割れたといっても、いちばん大きな組織。そう簡単に、どちらにつくと表明できません」
抗争が激しかった時代と違い、法規制は厳しい。事件を起こすと、組のトップの責任が問われかねない。当面は水面下で静かな「抗争」が続くのだろうか。
※週刊朝日 2015年10月2日号
日本人は、お墨付きや家柄・権威が大好きだ。
抗争前夜なのだろうか。
0 件のコメント:
コメントを投稿