平成29年4月に消費税率を10%に引き上げる際の負担軽減策をめぐり、生活必需品の税率を低くする軽減税率の優位性が見直されている。財務省の提案する「還付制度」に比べ事業者の負担は増すものの、消費者負担が少なく、実質的な準備にかかる期間も短いとみられるためだ。消費税再増税まで約1年半という時間的な制約を踏まえ、軽減税率の実現に向けた前向きな議論が必要だ。
日本商工会議所の三村明夫会頭は16日の記者会見で、「事業者に膨大な作業が発生する」と述べ、事務処理面での負担増を理由に軽減税率に慎重な姿勢を示した。税率が複数になる軽減税率の導入に対し、事業者が取引ごとに商品の税率や税額を記載するインボイス(税額票)が必要とされているためだ。
軽減税率を導入する際に必要な経理システムの改修や、作業の見直しを全事業者が行うには、「1年半程度かかる」(財務省)とされる。ただ、軽減税率を導入しなくても、消費税率10%への引き上げに伴う一定のシステム改修は、すべての事業者で必要となる。
さらに、還付方式を実現するために必要な環境整備には、1年半以上の時間がかかると見込まれる。還付に必要な税と社会保障の共通番号(マイナンバー)制度の個人番号カードの読み取り端末を、全国約75万件の小売店や飲食店に普及させ、自動販売機や宅配業者のシステムを刷新するなどソフト・ハード両面での投資が必要となるからだ。
また、年4千万枚の発行しか予定されていない個人番号カードが、消費税率を引き上げる29年4月という“期限”までに、すべての国民に行き渡るのかも疑問が残る。限られた期間での導入を前提に考えれば、実現性の軍配は軽減税率に上がる。
こうした中で、事業者の事務負担を簡素化する検討も進んでいる。
軽減税率で懸念される事業者の事務負担増について、与党側はインボイス以外にも、現行の帳簿や請求書を使う方式を検討する。軽減税率は欧州をはじめ世界各国で一般的になっており、「各国の事例を参考に導入の道筋をつけやすい制度」(公明党税調幹部)という。
消費者への負担が少なく、かつ税負担軽減の実感も高い軽減税率で難しいのは、対象品目の線引きだが諸外国の事例では政治的に決まる場合が多い。政府の果たす役割は大きい。
(産経新聞)
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