独フォルクスワーゲン(VW)グループが排ガス不正問題で揺れている。意図的に不正行為を行っていた疑いが濃厚で、23日にはウィンターコルン最高経営責任者(CEO)の辞任表明に発展した。VWはクルマの環境性能の高さをアピールしてきただけに、不正問題によるブランドイメージへの影響は計り知れない。影響は米国のみならず世界に広がっており、同社の経営に大きな打撃を与えるのは必至。2015年通年に世界販売台数首位を目指す道は遠のいた。(ワシントン 小雲規生、会田聡)
「顧客の信頼を裏切ったことを深くおわびする」。VWのウィンターコルンCEOは22日に発表した動画声明で、排ガス不正問題について全面的に謝罪した。
日本では問題のディーゼル車を正規ルートでは販売していないとされるが、日本の自動車業界関係者は「日本は環境意識の高い市場なのでブランド力が低下する恐れがある」と指摘する。
日本自動車輸入組合によると、VWは新車投入が滞った上期(1~6月)の国内販売が前年同期比16・5%減の2万9666台と落ち込み、メルセデス・ベンツ(3万2680台)に16年ぶりに首位を奪われた。
このため7月以降は、高級セダン「パサート」の新型車や、主力車「ゴルフ」のプラグインハイブリッド車(PHV)を相次いで発売。巻き返しを期すつもりだったが、今回の問題で出はなをくじかれた恐れもある。
米環境保護局(EPA)によると、VWグループは08年以降に米国内で販売したディーゼルエンジンの乗用車約48万台に違法ソフトを搭載し、大気浄化法違反の疑いがある。違法ソフトは「試験」状態を検知すると、排ガス浄化機能がフル稼働して基準を満たすが、実際の走行時には同機能が大幅に低下する仕組みになっている。不正対象車が実際に走行した際の窒素酸化物(NOx)の量は基準の最大40倍になるという。
米メディアによると、米国がNOx基準を厳しく設定する中、VWはこの基準を守ると燃費性能が低下してライバル車よりも見劣りするのを嫌気し、不正に手を染めたとみられている。
不正問題の影響は世界に広がっている。VWグループにアウディ、ポルシェなど10を超えるブランドを持つが、ブランドイメージの失墜からこれらブランドの世界販売に影響が及ぶ可能性もある。
また、米メディアによると、本国のドイツではメルケル首相が事態の徹底究明を求め、フランスやイタリア、韓国の当局もVWへの調査に着手。米司法省も刑事責任を問う可能性を含めて調査を始めた。
米国では所有者らの訴訟が起きており、「VWはより長期にわたって一段と多額の費用支出を迫られる」(在米自動車ジャーナリスト)との見方が多い。訴訟の行方次第では、収益を長期間圧迫しかねない。
VWは世界販売台数で15年上期にトヨタ自動車を抜いて初めて首位に立った。通年でも首位を狙っているが、道が遠のいたと言わざるを得ない。今回の問題でVWの先行きは見えなくなった。
(産経新聞)
偽りの環境性能では、誰も買わなくなる。
自動車業界全体に同様の不正がないか、厳しく調査・検査されるのだろう。
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