国内最大の指定暴力団、篠田建市(通称・司忍)6代目組長率いる山口組(神戸市)の分裂騒動で、首都・東京の「暴力団勢力図」にも異変が起きる可能性が浮上してきた。山口組を脱退する山健組の組長は、山口組に次ぐ勢力を持つ指定暴力団住吉会(東京都)の最高幹部と「兄弟盃」を交わす親密な関係が指摘されているのだ。脱退組が結成する新組織には、こうした他組織の参加もささやかれており、巨大な資金源をめぐって全国の暴力団がしのぎを削る東京でも山口組分裂の影響は避けられない情勢だ。
脱退する山健組などの直系組織(2次団体)の組長らが結成する新組織は象徴の代紋について、山口組と同様に「山」の文字を菱形にあしらった「山菱」を使用する見通しで、「神戸山口組」など「山口組」が入った名称にすることが検討されている。
新組織は山口組から脱退した関西の直系組織が中心だが、今後どのような組織が加入するのか。九州や中国地方の非山口組系暴力団も参加するという情報もあるが、警察当局が警戒するのは、東京に拠点を置く主要暴力団の動きだ。
ある捜査関係者は「最大の注目は、第2位の勢力を持つ住吉会と、第3位の稲川会の動向だ」と指摘し、こう続ける。
「住吉会と山口組は敵対関係にあったが、脱退する山健組の組長が、住吉会の最高幹部とは『兄弟盃』を交わすなど、昵懇(じっこん)の間柄にあるのはよく知られている。個人的なつながりが非常に深いため、今回の分裂が住吉会にどう影響するか。ただ、いつ沈むかもしれない船に乗ることはないだろう」
稲川会はどうなるのか。別の捜査関係者は「住吉会と違って稲川会は山口組3代目組長時代から友好関係にある。現在の稲川会ナンバー2は山口組の主流派となった弘道会幹部とも兄弟分にあり、稲川会は、山口組につくとの見方が大半だ。ただ、稲川会は4年前に傘下組織が内紛で分裂しており、分裂組織や山健組に近いとされる組織が脱退組に流れる可能性も捨てきれない」と指摘する。
山口組の分裂騒動は大きな衝撃を与えたが、山口組関係者によると、分裂の可能性がささやかれ始めたのは8月初旬。同時期に行われた組行事に騒動の中心にいる山健組や宅見組のトップらが欠席したことから「組が割れるかもしれない」との情報が出回ったという。当初は事態の収拾を楽観視する声が多かったものの、空気が一変したのは、8月中旬ごろのことだった。
「『割れるかもしれない』から『割れる』という話に変わった。同時に、幹部から『敵対組織の関係先には近づくな』というお触れも出たことで緊張感が一気に高まった」(山口組関係者)
すでに一部の団体が「銃撃対策として組事務所に鉄板を設置するなど、抗争に備える動きもみられる」(同)といい、一触即発のムードも漂い始めている。
神戸に本拠を置く山健組と名古屋で勢力を張る弘道会との対立の構図が鮮明となった山口組の内紛劇。捜査関係者は関西だけでなく、首都圏での影響は避けられないとみている。
捜査幹部は「都内には弘道会や山健組傘下の3次団体や4次団体が多く進出している。シマが近接している組織も多い。小競り合いはあちこちで起きるはずだ。他組織も巻き込み、名古屋vs神戸の代理戦争に発展する可能性もある」と動向を注視している。
(夕刊フジ)
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