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2015年9月9日水曜日

安保関連法案 参議院特別委員会の初の参考人質疑のダイジェスト

<参考人による意見陳述>
 ◆宮家邦彦(立命館大学客員教授) 「著名な憲法学者は「外務省員は自衛隊に入り実戦を経験すべきだ」と述 べた。私はクウェートで研修時にイランイラク戦争が起き、バグダッド勤 務などで戦場に送られる兵士の気持ちをわずかながら知った。法案に反対 する方々の主張は、およそ安全保障の本質と安保環境の変化を無視した観 念論、机上の空論だ。空想的、ガラパゴス平和主義だ」
 ◆宮家邦彦 「キーワードは「抑止」だ。抑止に失敗すれば悪意ある勢力は勢いづく。 危機は何でも起こり得るから、あらゆる事態に対応できる法的枠組みを用 意すべきだ。バグダッドのCPA(連合暫定当局)に出向したが、2004年に サマーワに陸自本体が到着後、情報や出席できる会議は格段に向上した。 信頼できない部隊に待遇を与えないのは常識だ。安全保障面での相互信頼 を高める努力が必要だ」
 ◆宮家邦彦 「「戦争法案」「軍国主義への道」との批判があるが本当にそうか。それ ほど今の民主主義を信頼できないのか。法案は平均的なNATO諸国と比べて はるかに限定的な集団的自衛権の行使しかできない。主要国はネガティブ リストだが、日本はポジティブリスト。既存の法改正しかできない。今ま での積み重ねがあり、ネガリストの不採用は正しい」
 ◆宮家邦彦 「「リスクが高まるからけしからん」との議論は命を賭ける自衛隊員に極 めて失礼だ。巨大火災に「危険だから行くな」と言うのか。消防隊員と自 衛隊員とどこが違うのか。法案を批判する人ほど軍事、安全保障の知識が 不十分だ。典型例が「武力行使との一体化」論。わからなければ英訳すれ ばいいが、一体化論は英訳できず国際的に通用しない。憲法学者や元法制 局長官こそ、戦争地域を体験されてはいかがか」
 ◆宮家邦彦 「憲法があるから国家があるのではなく、国家を守るために憲法がある。 古い憲法解釈に固執して国家を守れない矛盾に気づかないのか。法案反対 の委員の方々は、本当に現行法制だけで21世紀の日本を守れると思ってい るのか。責任ある立場の方々ほど、法案が必要だと理解されていると信じ たい。現実に即した高度の政治判断を。安全保障に右も左もない。あらゆ る事態に対応できる切れ目のない法制を」
 ◆大森政輔(元内閣法制局長官・弁護士) 「政府は今まで、自衛隊の保有は認容できるが集団的自衛権の行使は否定 すべきと、そのつど確認し堅持してきた。個別的自衛権と集団的自衛権は 決して同質ではなく本質的差異がある。後者は直接的には他国を防衛する ものであり、「他国防衛権」「他衛権」と呼ぶ方が適切だ」
 ◆大森政輔 「集団的自衛権は個別的自衛権と本質的に異なる別次元の事象であり、 「基本的な論理の枠内における合理的な当てはめ」に留まらない。我が国 を取り巻く国際的な安保環境の変化を考慮しても、内閣の独断であり許容 できない。閣議決定でなし得ることを超えた措置であり無効だ」
 ◆大森政輔 「新3要件の第1要件の後半に「明白な危険」とあるが、「明白な」を付加 しても、「危険」というのは辞書でも「危害または損害の恐れがあること」 とあり、不確実な概念が本質的に含まれている。不確実性を排除するのは 困難だ」
 ◆大森政輔 「砂川判決では集団的自衛権を行使できるかは全く争点でない。判決の意 味は、いかなる具体的争点に対してなされたかに即して決まる。政府の主 張は法律学の基本理解から想定できない全くの暴論だ。国民を謝って導く 結論に至ったのは極めて遺憾。内閣法制局はそれを是正しなかった」
 ◆大森政輔 「法案は国際紛争への積極的関与の端緒になる恐れがある。第3国に攻撃 の矛先を向けることにより、第3国が我が国に攻撃の矛先を向けるのは必 定だ。「抑止力」以上に紛争に巻き込まれる恐れがある。集団的自衛権 の行使を国策に採用するなら、憲法改正手続きに載せて全国民的に検討す ることが不可欠だ」
 ◆神保謙(慶応義塾大学総合政策学部准教授) 「2つの新しい深刻な問題がある。1つは今まで法改正、時限立法による増 改築工事だったが、脅威の性質が空間・領域横断的になり、制度に空間別 の縦割りが多くミスマッチが生じている。2つ目は中国の台頭だ。グレー ゾーン事態対処の不備。軍事パレードに見られる軍事力の急速な拡大。中 国は米軍に対する拒否力を向上させている。これにより、紛争対処の方程 式が変化した。これらが新安保法制策定の根拠だ」
 ◆神保謙 「法案を十分に単純化できず、国民の理解を得られていない。政府与党の 努力不足だ。4つのポイントがある。1つは平時と有事、低強度と高強度の 隙間を埋める事。2つは安保上の地理的空間について。特に海洋安保では 東シナ海、南シナ海、インド洋、中東と広域空間の戦略的重要性が拡大し ている。3つは米国以外の友好国との連携だ。4つは領域横断。米軍や日米 同盟が中国への相対的優位性を確保し続けるには、宇宙やサイバー等での 連携強化が必要だ」
 ◆神保謙 「現行法案でも不十分だ。1つはグレーゾーン事態対応。海上保安庁法20 条でがんじがらめになっており、武器使用権限が欠落している。2つは新 3要件で集団的自衛権行使の範囲が限定され過ぎている。3つは国際平和協 力法の改正。現代のPKOでは、駆けつけ警護の「受け入れ同意の安定的維 持」との前提は困難になっている」
 ◆伊藤真(日弁連憲法問題対策本部副本部長) 「憲法があってこその国家だ。不完全な人間が政策を実行する。それを憲 法によりコントロールするのが人類の英知だ。憲法論が観念的、抽象的な のはある意味当然だ。憲法を無視して進めるのは、立憲民主主義国家とし てあり得ない。強行採決による成立は許されない。ただちに廃案を」
 ◆伊藤真 「国会に民主的正統性が必要だ。正当に選挙された国会議員による納得で きる手続きが保障されるべきだが、最高裁が違憲状態とした選挙で選出さ れている。安保法制について「憲法判断は最高裁を尊重する」と言うなら ば、まずは違憲状態を正してから議論すべきだ。デモや世論調査に示され た主権者国民、憲法制定権者の声を聴くべきだ。民意を反映する政治家は 想像力を発揮すべきだ」
 ◆伊藤真 「国会で十分に議論されたからこそ国民は従う。この納得感こそが民主主 義を支える。それが不十分なまま、他国民の殺傷行為を行うのは自衛隊員 にとっても国民にとっても悲劇だ。政府からメリットの説明しかなく、デ メリットの克服の議論がなされていない。政府は、徴兵制は憲法18条違反 だから違憲としているが、必要性や合理性の点で必要だとか、状況が変化 したしてある日突然解釈変更することがあり得る」
 ◆伊藤真 「憲法は政府に戦争する権限を与えていない。集団的自衛権の行使は政府 に戦争開始の判断の権限を与えることであり、交戦権の行使に他ならない。 国民が自らを危険にさらしたり、加害者になることについて、選択の権限 を奪い、国民主権に反するものだ。国会議員には憲法尊重擁護義務がある。 今こそ参議院の存在意義を示してほしい。国民は選挙権を最大限に行使す るだろう。国民はこれからも理不尽に対して抗い続けるだろう。一人ひと りの国民は主権者としての責任を自覚しているから」
 <質疑から>
 ◆大森政輔 「(長官当時の周辺事態法審議の際)戦闘発進準備中の米軍機への給油に ついて、内閣法制局参事官は典型的な(武力行使との)一体化事例だと。 だから認められないと言い続けた。表面上は「ニーズがない」として収め た。「憲法上認められない」ということで議論が打ち切られた」 「参事官は一騎当千の強者だ。それが資料収集し見解を長官に上げる。制 度で権限を持つというより、日頃の研鑚による意見なら従おうと。普通な らそういう気持ちで仕事をしているはずだ。今回、どこがどう曲がったの か、それが十分になし得ていないのが問題だ」
 ◆井上哲士(共産) 「2004年の外務省安全保障研究会の論点という、情報公開で入手した内部 資料には「我々は一般法を作るとなった場合、集団的自衛権にはふれず、 国際安全保障の観点から武力行使との一体化論をできるだけなきものにし ていく必要がある」と書いている。当時在籍されたていたが、この文書を 知っているか?」 宮家「10年以上前に辞めている。私は関与しておらず申し述べる事はない」
 ◆山本太郎(生活) 「ある国が民間人に無差別攻撃を行った場合、国際法違反の戦争犯罪か?」 宮家「あまりに漠然とした質問でお答えしかねる」 大森「同じだ」 神保「国連憲章が認める個別的・集団的自衛権、国際安保措置から外れる 明確な国際法違反だ」 伊藤「国家の意志としてなされたら国際法違反だ」
 ◆山本太郎 「米軍の広島、長崎への原爆投下、東京等への大空襲は国際法違反の戦争 犯罪か?」 宮家「安保法案との関係がよくわからずお答えを差し控える」 大森「一般論として考えはあるが、在職中の答えとの関係で迷っており、 ここでは控えたい」 神保「日本も重慶爆撃を行い、連合軍もドレスデン爆撃を行った。国際規 範の中で看過できないが、1940年代に国際法違反かどうかは十分に答えは 出ていない」 伊藤「国際法違反だ」
 ◆山本太郎 「イラク戦争やアフガニスタン戦争で米軍は多数の民間人を殺傷した。こ れは国際法違反か?」 宮家「質問の趣旨がわからず差し控えたいが、国連決議に基づく武力行使 だった。個々のものを一つひとつ見ていくべきだ」 大森「実際にどうだったか、十分把握している自信がないので確定的なお 答えはいたしかねる」 神保「アフガン戦争は米国の自衛権拡大を安保理がかなり明確に認定した。 イラク戦争は明確な国際法的根拠は疑わしい」 伊藤「国際法違反だ。劣化ウラン弾の使用など問題点が山のようにある」

発行:集団的自衛権問題研究会 
代表・発行人:川崎哲 
News&Review特別版 編集長:杉原浩司

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