北村事件とは、平成4年に京都での現況調査による税務調査(所得税)において、その調査方法が違法とされ、国家賠償に至った事件です。
この事件は平成7年3月27日の京都地裁の判決後に控訴となり、平成10年3月19日の大阪高裁で確定。
(事案の概要)
(事案の概要)
納税者の妻が店二階の住居部分はプライベートな部屋だから入ってもらっては困る旨を述べ、二階へ上がることを強く拒否し続けたにもかかわらず二階に上がったことや、女性従業員のバッグを強引に取って中を調べるなど、質問検査権の濫用ないし逸脱に当たる違法な行為があったとして、国家賠償法に基づき慰謝料の支払いを求めた事案。
(判決の概要)
一審の京都地裁と同様、控訴審の大阪高裁でも「税務職員による質問検査権の行使は、一定の制裁の下に、相手方は質問検査を受忍することを間接的心理的に強制されているものであって、相手方において質問検査に応じる義務があることを前提とするものではあるが、相手方においてあえて質問検査を受忍しない場合にはそれ以上直接的物理的に強制し得ないという意味において、任意調査の一種である。」
「質問検査権の行使に際しては相手方の承諾を要するものであるところ、その承諾は必ずしも明示の承諾に限られるものではなく、場合によって黙示の承諾も許されるものと解するのが相当である。ただし、質問検査権行使の相手方が、納税義務者本人ではなく、業務に従事する家族、従業員等である場合には、右質問検査権の行使が納税義務者本人の承諾が得られないことを回避する手段目的でなされることのないよう特別の配慮をすることが望ましく、したがって、納税義務者本人の事前の承諾が得られていない場合における業務に従事する家族、従業員等による黙示の承諾の有無については、その具体的状況を勘案した上で慎重に判断する必要がある」
「居宅部分である二階へ上がる行為自体は、質問検査に応じるよう説得を続けるための立ち入りであって質問検査権の行使そのものとはいえないとしても、居住者の拒絶の意思に反して居住区に立ち入ることは許されないことは明らかであるから、承諾を得ないで二階へ上がった行為は、社会通念上の相当性を逸脱した違法な行為であると解すべきである」
「これに続いて行われた二階での質問検査権の行使としての税務調査は、違法に立ち入った場所における質問検査権の行使であることから、相手方の承諾の有無を問うまでもなく、いずれも違法と解すべきである」
「レジ下の引き出しの調査も承諾に基づかない質問検査権の行使であると認められ、 違法な行為である」 「バッグを見つけ、繰り返し拒否したの も押し切って半ば強引にバッグを取って中 をあけ、在中物を調べたものであって、その行為の態様だけをみても、承諾のないままに行われたものと認められるものである上、女性のバッグの内容物などはプライバ シー保護の要請が特に強いものであるから、 右行為は社会通念上の相当性を欠くものであり、違法な質問検査権の行使と解され る。」として違法行為によって名誉信用を害され、精神的苦痛を被ったことに対する慰謝料の支払いを国に命じた。
(税大ジャーナル 16 2011. 5 から引用 )
税務署の違法調査になってしまったが、任意調査・現況調査の限界だろう。
今は、こんな税務調査はないが、悪質な納税者が横行しているのだろう。
0 件のコメント:
コメントを投稿